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第3に、ASEANは、例えば日本と中国が戦うような紛争に全地域が巻込まれる事態を見たくないであろう。「中国は上昇中の強国であるが、敵である必要はない。」と言ったエズラ・ボーゲルの言葉に私は同感である。

マイケル・スワインは、中国の軍国主義についてマスコミが作り上げた仮説にもとづく神話の正体をあばいた。彼によれば、中国がこの地域内で米国その他の国々の国益をおびやかしうるというのは誤った考え方であるという。その神話には、中国の台湾に対する強硬政策から年間800億〜1,500億ドルとさまざまに見積られる破滅的な軍近代化計画、あるいは、この地域の米国の国益に挑戦するための兵力投入能力まで含まれている。

中国に対する評決はまだ下されたわけではないが、この上昇を続ける強国がどれ程悪者であるかを、「一夜にして悪の帝国になる」という程度にまで誇張しない方が賢明である。我々は、事実と神話とを判別しなければならない。この観点からこの地域にとって重要なことは、中国が関与することができて、利害関係を持ち得る強力な多国間制度を発展させ、誰もがその安全保障を損うようなことはないと感じ得るようになることである。封じ込め政策を回避するために中国が為すべきことは、次の2つ、即ち、中国がゲームのルールに従ってプレーするという証拠を示すと共に、軍事に一層透明な政策を採り入れ、兵力の誇示や威嚇を止めることである。中国が台湾に対して行こなったことで多くを失った。あれはやらずもがなの神経戦であった。

台湾は離脱した一省にすぎず、台湾に対するいじめは中国に対する親近感を損なうこととなろう。また、中国は、外部勢力が結託して自国を不安定化させることはないと気付くべきである。即ち、中国はこの地域の暴れ者にならない限り世界を恐れることはないのである。

 

○日本

日本は極めて柔軟性に富み、多岐にわたる政治形態の強国であり、世界経済の牽引車としての日本の発展ぶりは、我々が見てきたとおりである。言いなりであった日本も、年と共にノーと言えるようになった。ノーと言える日本が果たして東アジアの政略の場でどれ程正しいかを理解するのは仲々難しい。日本経済の強さは良く知られたところであり、このところいくつかの問題はあるものの、その根底は強固である。年間3〜4パーセント程度の成長は多くの国々にとって驚嘆に値する。

1997年1/四半期の日本の貿易収支で黒字は急激に減少したものの、米国に対して

 

 

 

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