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のASEAN宣言」(1992年7月)を遵守するとの保証の付与、また、南シナ海において一方的行動は採らないとするフィリピンとの2国間覚書きを1995年8月に交したこと。

1996年6月7日中国が国連海洋法条約を批准した時、この地域にはかなりの楽観論があった。誰もが、中国は1982年の海洋法条約の精神に反いたり、あるいは自国の誓約を反古にするようなことはなく、また認められたルールに従ってゲームを行こなう用意があるものと信じていた。従って、中国が1997年4月25日、2隻のフリーゲート艦をスプラトリーに派遣したときには、フィリピンだけでなく、多くの国々が中国は一体何を企んでいるのかと不快感をあらわにした。

 

○中国

中国は、ベトナム戦争のどさくさに乗じてパラセル諸島を占拠して以来、20年以上にわたって南シナ海でさまざまな試みを行こなってきた。南シナ海における中国の目的を言い当てるのは難しくない。単なるプレゼンス以上のものであることは明らかである。中国はこの地域の支配を求めており、これは南シナ海を自国の湖と見なす北京の態度から理解できる。中国は係争中の地域に対して完全な主権を有すると強固に信じているが、当然のことながらこの一方的な中国の立場は中国の主張の根拠に疑いをはさむその他の国々との間で対立している。1978年、ソ連とベトナムが仲違いした後、南シナ海は、中国によると、強化を要する脆弱な側面であると認識された。この地域を支配しようとする中国の政策は、この地域における米国の国益の減少とソ連の崩壊によってより容易になった。中国は、南シナ海への兵力投入を開始し、海南島の基地を強化、この地域に航空基地を建設した上で、スプラトリー諸島へ海軍任務部隊を常続的に展開することによって強力なプレゼンスを示した。更に、軍事行動とは別に、中国は漁船団を係争地域へ進出させ、最近のベトナムの大陸棚における掘削の事例(1997年5月)に見られるように、海洋調査や、石油、天然ガスの掘削を行こなった。中国は、また、南シナ海のいくつかの環礁に気象観測所を建設することにより、この地域における気象業務の強化のための地歩を更に一歩進めた。

南シナ海における中国の目的は、この地域の全般的な戦略利益と連接はしていないように見受けられる。中国は、南シナ海と、自国の成長する貿易、投資、技術移転及びその他の商行為において増大する利益とは別個に取扱っているようである。しかるに、中国が自

 

 

 

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