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は早すぎるが、このように極めて際立った軍艦を行き先の不透明なこの地域の海上へ投入することは、ただでさえ不安定なこの地域の海上の安全保障の環境を一層複雑なものにしかねない。

この地域内の海上の境界線をめぐる紛争や重複するEEZは、領有権問題として取扱われる限り当分の間、我々につきまとう問題として続きそうである。そのような定義による領有権問題は、耐えがたい結果を恐れながら、国家として領有権の主張を試練にさらすか、あるいは危険を冒す覚悟がなければ解決は難しい。それ故に、海上の境界線についての主張に付随する多くの問題、例えば南シナ海及び東シナ海は、当事国が自国の領有権についての交渉に応ずる用意がない限り、迅速な解決は不可能である。この理由から、筆者は、尖閣諸島、独島、千島列島その他は当分の間、解決できないと考えている。例えば尖閣諸島問題は、日本が1895年公式に領有を宣言して以来の問題であり、未解決のまま絶え間なく2国関係の頭痛の種として残るであろう。

では、南シナ海での問題をもっと適切な面から検討してみよう。この地域では各国の領有権が競合することは、これまで多くの人が採り上げ書いているので、それを繰返すことは意味がない。本当の問題は対立する主張それ自体ではなく、いかに中国と付き合い、中国政府を国際的に認められたルールでプレーするよう説得することであるとしか言いようがない。

これまでの記録によれば、1973/74年にパラセル(西沙)諸島を南ベトナムから奪取して以来、中国は南シナ海で幾度となく「ミスチーフ」事件を繰返してきた。中国が1983年、急きょかき集められたベトナム海軍をスプラトリー諸島で撃破して以来、同国は断固とした態度を崩していない。ここ数年間に中国が執った行動には次にようなもの、即ち、ウッディ(woody)島における飛行場建設(1995)、ミスチーフ礁の占拠(1995)、ベトナムが主張する大陸棚における採掘(1997)の他に、特にフィリピンとベトナムが主張するスプラトリー海域へフリーゲート艦の派遣(1997)がある。中国は、漁船の操業を別にして、他国のEEZ内の海洋科学調査を実施している。

これらの行動は、次に示す事項の背景として見るべきであろう。即ち、中国による領海及び接続水域法の一方的な宣言(1992)、1995年パラセル諸島及びその他の中国沿岸(スプラトリー諸島を除く)に対する基線の宣言、国連海洋法条約の批准(1996年)、1995年南シナ海における行動に関して非公式な指針を示す「南シナ海について

 

 

 

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