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海軍は空軍以上に老朽化が進んでおり、7隻のフリゲイトはいずれも作戦の用をなさない。沿岸海域とは環境の異なる南シナ海で作戦可能なものは、55隻の哨戒・沿岸戦闘艦艇のうち、オーサOsa型ミサイル艇7隻と旧ソ連製の魚雷艇19隻のみであるが、いずれも中国艦と交戦した場合に生き残れる可能性はない。

ベトナムは極めて窮乏した状態にある。同国にとって兵員の削減と兵器類の更新はいずれも重要な問題であるが、もしこれらが実施されれば、その結果、同国の社会と経済の不安定化が進む可能性がある。

 

中 国

潜水艦兵力は、夏Xia型戦略ミサイル原潜1隻と漠Han型攻撃型原潜5隻計6隻の原子力潜水艦及びロシアから購入したキロ型潜水艦3隻を含む計53隻の在来型潜水艦の合計59隻、主要水上戦闘艦艇54隻、哨戒・沿岸戦闘艦艇830隻余、機雷戦艦艇121隻、両用戦艦艇71隻、支援艦艇等165隻余、陸上基地の作戦航空機535機、武装ヘリコプター25機、海軍歩兵1個旅団(約5千人)と周辺諸国との兵力量の比較では他を圧している。但し、質的には老朽化したものがかなり多く、他の外洋型海軍と比較すると外洋での作戦能力は低い。しかし周辺海域への進出という中国の長期的意図について、関係諸国は懸念を持ち続けている。急増を続ける中国の国防費、外洋型海軍建設への努力、ロシアからの最新兵器の調達、安易な外貨獲得手段としての武器輸出などに加えて、1996年3月の台湾総選挙に向けて中国軍が行った大規模軍事演習や台湾周辺へのミサイル発射は、中国の対外政策が決して温和なものでなく、場合によっては地域の不安定要因になることをはっきり示した。

Y-8型輸送機の空中給油機への改造、航続距離の大きいSu27戦闘機の購入に加えて、中国がミャンマーヘの寄港権を獲得したことで周辺諸国は懸念を深めている。中国は戦力的に他の周辺諸国を圧倒しており、特に精鋭の海軍歩兵1個旅団をスプラトリー諸島へ揚陸しうる両用戦能力や、小規模な敷設でも海上作戦あるいは交通に深刻な妨害を与えうる機雷敷設能力は、無視できない能力である。引続くロシアからのKilo級潜水艦の購入も周辺諸国に新たな脅威を与えつつある。外洋型海軍の骨幹をなす航空母艦については、2005〜20年の間に、30,000〜48,000トンの空母2隻の建造を目指す計画が進められ、要員の養成や空母機動部隊としての運用研究、母港となる港湾の拡張・整備など幅広い範囲にわたっての準備が行われている模様である。現在旅滬Luhu 2隻、旅大Luda?V型駆逐艦1隻、江衛Jiangwei型フリゲイト4隻、大運Dayun型輸送艦など新鋭艦艇の数はまだ少ないが、これらの艦艇が増えれば、将来、大平洋やインド洋でライバルの海軍に挑戦することが十分に可能となろう。実際、1997年2月から5月には旅滬級及び旅大級駆逐艦各1隻と補給艦1隻で編成された遠洋航海部隊3隻が遠く太平洋を越えて建国以来初めてアメリカ大陸本土を親善訪問し

 

 

 

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