潜水艦部隊(おそらく2隻)の創設から戦力化までには、今後相当長い期間が必要であろう。
空軍は、ロシアからMiG29を18機、アメリカからF/A-18戦闘機を1996年に導入するという決定を行った。F/A-18はAIM-9S対空ミサイル及びハープーン対艦ミサイルを搭載できる。いずれの戦闘機も行動半径は800〜1,000キロあり、同国が領有権を主張する南シナ海で作戦するには十分な能力であるが、同時に前進基地の維持運営も必要となる。
このようにマレーシアは有力な国防軍を保有し、その能力を改善しつつあるが、優先すべき事項と現実に達成可能な目標の間に矛盾があるようである。
インドネシア
国土は約1万3千の島々から構成され、それらが東西5,120キロ、南北2,000キロの範囲に散在している。この広大な管轄水域の警備、人員・資材などの輸送、海洋資源の保護のためには大型の海軍が必要である。冷戦後、東ドイツの艦艇39隻を購入したため周辺諸国の懸念を招いたことがあった。それまで軍事情報をほとんど公開することがなかったために起こったことで、それらが小型の中古艦艇であることが分かってようやく心配は収まった。それ以後、透明性を高める努力によって周辺諸国の警戒感は消え去ったようである。
経済危機以前は、長期計画としてフリゲイト20隻を整備し、自国の海上監視能力を改善するとともに、域内諸国と協同して、周辺海域の監視の効率を上げることに力を入れていた。
ボーイング737-2003機と給油機KC-130B 2機で編成される海上偵察航空隊は、南シナ海南西部のナッナ島に全長2,250メートルの滑走路を有している。海軍はドイツ製209型潜水艦2隻、フリゲイト17隻、哨戒・沿岸戦闘艦艇59隻、機雷戦艦艇13隻及び両用戦艦艇26隻を保有しているが、十分な水深の港湾が少なく、哨戒艦(コルベット)を横付けできる港の数は10カ所以下である。空軍に空中給油機は無く、F-5要撃戦闘機部隊の任務は首都ジャカルタの防空のみに限られており、その他の地域での行動能力には疑問がある。10機保有しているF-16戦闘機も主要基地以外では運用できないため、南シナ海での行動には制限を受ける。ナッナ島にある航空基地はマラッカ海峡の南入口をカバーするには絶好の場所にあるが、スプラトリー諸島までは800キロの距離である。
仮にインドネシアがASEAN諸国と南シナ海での軍事共同作戦をすることがあっても、その能力は限定されたものとならざるをえない。支援艦艇や輸送機の数が紙の上では多くても、実際には一度に軽武装の数個大隊程度の輸送が限度で、しかも長期間の支援には十分対応できない。