ゾセ対艦ミサイル搭載のコーモランCormoran級高速艇や哨戒用航空機などの購入を図ると同時に、イギリスが香港に配備していたピーコック級哨戒艇3隻を取得し、就役させた。
フィリピンは、経済的及び安全保障上の理由からASEANのメンバーとしての立場に重点を置いているが、経済問題についてはともかく、中国がこの地域に対して強硬な政策を更に強めた場合、ASEANがフィリピンを軍事的に支援することはありそうにない。
ブルネイ
ブルネイは1985年に独立してからも旧宗主国であるイギリスとの繋がりは強固であるが、外交・国防政策は完全に独自のものとなっている。イギリス及びシンガポールと防衛協力協定を結んでおり、イギリスからの歩兵1個大隊の他にシンガポール軍500名が訓練のために駐留している。アメリカ、オーストラリアとの間では共同訓練も行われている。海軍及び空軍は陸軍の一部である。
同国の防衛は対ゲリラ戦、沿岸防備及び防空に重点が置かれ、小型ながら良くバランスのとれた兵力構成である。海軍はエグゾセ対艦ミサイル搭載のワスパダWaspada級高速艇3隻、哨戒艇(100トン以下)3隻、空軍は作戦機2機と武装ヘリコプター6機を保有し、低烈度の脅威に対しては十分な抑止力となっている。経済的に心配がない限り、その主権が脅かされる恐れはなさそうである。
マレーシア
国防軍は、防空、洋上哨戒、低烈度紛争対処能力に重点が置かれ、極めてバランスのとれた兵力構成である。洋上哨戒能力はこれまでのC-130HMP 3機に加えて、ビーチクラフトB200T 4機が調達されたが、マラッカ海峡及び同国東西両沿岸のEEZの監視には十分の能力とはいえない。南シナ海の哨戒には、機数、航続距離とも不足している。
同国のバターワース基地にはオーストラリア空軍のP-3C 2機が常駐して周辺海域の監視を行うとともに、マレーシア、シンガポール両空軍と定期的に共同訓練を実施している。マレーシア海軍の4隻のフリゲイトのうち2隻がミサイル搭載艦(カスツリKasturi級)で、1996年にはイギリスで建造されたレキウにLekiu級フリゲイトの引渡しを受けた。洋上攻撃・哨戒兵力としてエグゾセ搭載のミサイル艇8隻及び沿岸哨戒艇2隻を含む37隻を保有し、そのほかに機雷戦艦艇5隻と両用戦艦艇3隻も保有している。
同国の沿岸の総延長距離は4,200キロに達し、重要なシーレーンと天然資源が東西2つの海域に隔てられていることを考慮すると、これらの兵力では明らかに不足で、今後10〜15年の間に兵力の増強が図られることとなろうが、限られた国防予算内で各種の計画の優先順位について競合が生じることとなろう。