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があるため、これまで曖昧に措置されてきた島々の領有権問題が関係国の間で再燃することとなった。

この条約の発効を契機に、各国において海軍力の増強を求める動きが起こり、南シナ海を中心とするアジア・太平洋の海にはナショナリズムが台頭し始めている。

 

南シナ海周辺諸国の状況

 

台 湾

主要艦艇は、ミサイル駆逐艦7隻、駆逐艦(対艦ミサイル搭載)11隻、ミサイル・フリゲイト5隻、フリゲイト18隻、潜水艦4隻のほかに、機雷戦艦艇13隻、両用戦艦艇23隻、哨戒艦艇など101隻を保有する。陸軍兵力を削減して海空軍の近代化を進める計画で、潜水艦と対潜哨戒機の近代化が遅れているものの、台湾防衛のためには現実に適合した兵力整備であるが、南シナ海における作戦も十分可能な兵力組織に脱皮中である。

台湾の海空軍力の増強計画は極めて意欲的である。海軍の「光華計画」によると米オリヴァー・ハザード・ペリーOliver Hazard Perry級ミサイル・フリゲイト16隻に加え、フランス製ラファイエットLaFayette級フリゲイト6隻が導入される予定であり、これが完成する時点で、台湾は新鋭の主要水上艦艇32隻を保有することになる。潜水艦についても新型艦10隻分の予算が認められており、導入に向けて先進諸国との間で鋭意交渉中と伝えられる。

空軍は今年からミラージュ2000戦闘機60機、アメリカからF-16A/B 150機の導入が本格化するほか、国産の経国戦闘機も約130機生産される予定で、今世紀の終わりまでに新鋭の戦闘機を合計530機程度保有することとなる。海軍は中国から台湾を防衛することを主たる目的として整備されているが、周辺のシーレーンの防衛能力も十分に備えることになろう。

 

フィリピン

約7,000の島々から成るフィリピンは、貧困と政治問題に悩まされている。そのため国防費に多くを割くことができず、少ない国防費の大部分も反政府ゲリラ対策に回されている。1995年、同国バラワン島沖にあるミスチーフ礁を中国に占拠されたが、なんら反撃できなかった。もし米軍がフィリピンに駐留を続けていたら、このような事件が生起したろうかという疑問は残る。

海軍は老朽フリゲイト1隻と哨戒・沿岸戦闘艦艇63隻を保有し、海上哨戒は空軍のフォッカーF-27M 2機が行っている。空軍の主力はF-5戦闘機7機であるが、形ばかりの兵力で、洋上での作戦は実施できない。しかし、最近同国は、アメリカなどと兵器購入のための資金援助と信用保障で合意に達し、エグ

 

 

 

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