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つて長年の願望であり、その整備は極めて息の長いレンジで着々と行われている。

1992年に、ウクライナから当時建造中だった空母ワリヤーグVaryagが譲渡されるとの報道があり、関係諸国は深刻に懸念したが計画は結局中止された。その後もロシアからキロKilo型潜水艦やSu27戦闘機の購入が続き、海空軍の外洋行動能力の改善は続けられている。Kilo級潜水艦については、最初に購入した877型2隻以降は、より静粛で高性能の636型2隻に加えて更に3隻の購入を計画中との報道がある。

1994年10月に黄海で発生した漢Han型原子力潜水艦と米空母キティ・ホークKitty Hawk CV-63機動部隊の遭遇事件は、着実に進められている中国海軍の近代化の一端を印象付けた出来事として記憶される。

南シナ海周辺の国々が海軍の近代化計画を争うように推進する最大の要因は、前述した中国の強引ともいえる進出への対応であるが、それに拍車をかける要因として、南シナ海をめぐる安全保障システムの限界及び新しい国連海洋法条約の発効が挙げられる。

これらの国々が進めている海軍を主とした軍近代化計画は、深刻なまでの軍拡競争とはいえないが、それによって整備されるレベルが高すぎる傾向にあり、相互に隣国を疑心暗鬼の目で見ることとなる。

しかし、これら関係諸国の間には、地域の安全保障問題を協議する機関がようやく成立したばかりで、まだその機能を十分に果たすまでに至っていない。東南アジアにはASEANが存在するが、これはあくまで地域の経済の発展と協力が主たる目的であった。政治・安全保障の対話の場としては、1994年11月、ようやくASEAN地域フォーラム(ARF)が発足し、現在までに21カ国が参加するまでに発展している。ARFは、長期的にアジア・太平洋地域の紛争処理機能を目指しているが、当面は信頼醸成措置を最も重要なアプローチとして位置付けている。しかし今までのところ、朝鮮半島や台湾海峡における緊張に対しては、何らの対応もできていないのが実状であり、それがARFの限界とも考えられる。南シナ海周辺諸島の間では、国防政策や施設などの公開、海上における偶発事故防止協定などの信頼醸成措置も緒に着いたばかりで、具体的な成果を挙げるにはほど遠い状況であり、地域全体としての戦略的判断からではなく、各国が近隣諸国の状況を見ながら独自の判断で兵力を整備しているため、時にはそれが第三者から見ても、余りにも過剰な兵力と考えられるような状況が生じている。

1994年11月に発効した国連海洋法条約は、200海里までの排他的経済水域(EEZ)、群島水域の設定や通過・通行権の設定など、国家の海洋権益に関する規範を定めたものである。しかし、同条約に示された規定では、これらの水域を設定するに当たっては、その基点となる箇所の領有権を明確にする必要

 

 

 

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