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うに、同地域はカンボジア紛争後以来、懸念の焦点となってきたのである。

 

中国約12億という膨大な人口を抱えている。推定によれば、2030年までに中国の人口は16億から17億にまで達する。中国はこれほどの大規模の人口の食糧をいかに賄うかという問題に直面している。魚は中国人の重要なプロテイン源である。南シナ海には海洋資源が豊富にあり、例えばTerumbu Layang-Layang(マレーシアも領有を主張)には約5万トンの鮭が生息しており、これは年500万米ドルに相当する。(27)この大量の鮭の他、南沙諸島に生息するクラゲも中国の領有権主張の理由となっている。中国の漁業の成長には、南シナ海は必要なのである。(28)このように、南シナ海の諸島は、西アフリカにまで及ぶ遠洋漁業の漁業基地として利用される可能性がある。

 

影響

 

中国の南シナ海をめぐる自己主張の強化が、中国、特に領有権を主張する他の国、そして東南アジアの国際政治一般にどのような影響があるだろうか。中国は南沙諸島領有を主張する他の諸国、特にベトナムのような中国の敵国からの「解放」と称して、武力を行使するであろうか。これは中国の東南アジア支配という新時代の兆候なのであろうか。中国の最近の自己主張の強まりから、どのような結論が導き出せるのであろうか。

 

第一に、南シナ海の領有権問題は、常に、かつ明確に、中国が主権の基本原則を決して譲歩しないということを示している。なぜなら、中国は南シナ海を自国の領土の一部であると認識しているからである。原則的には、中国は領有権を主張する他の諸国に対して決して主権を譲歩することはない。なぜなら、中国は依然として「絶対的主権」あるいは「排他的主権」という考え方に固執しているからである。しかし、戦略・戦術的には、中国の敵国への対応は非常に柔軟、開放的、かつ柔和である。

 

第二に、南シナ海の領有権問題は、中国の軍事力の膨大なパワーと目的達成への意思の強さを示している。現在の中国は、西欧列強の蹂躙に苦しめられた19世紀の中

 

 

 

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