いく。この地域はハノイの認識では南沙諸島に属しているのである。この公表の際、ベトナムは中国がベトナムの主権の及ぶ所謂大陸棚と排他的経済水域を侵犯したとして、即座に怒りを表明した。(7)
中国の南シナ海に対する高圧的態度が高まっている背景には、どのような理由があるのだろうか。国内の経済発展および国外の地域的・国際的環境の変化の複合の結果、中国の高圧的な態度と行動が生じてきたと言えよう。
a)国内要因
特定の内的要因が中国の対外政策のアウトプットを形成してきたと言える。その一つに、中国のナショナリズムの台頭がある。中国の失地回復主義者によると、中国に属する領土は永久に中国のものである。(8)もし領土が失われたら、機会あらばそれらは回復されねばならない、と彼らは言う。しかし、期間については何の言及もない。一部の分析では、北京は中国の偉大さを新たに確立し、軍事的近代化の努力に反映されているようにアジアでの歴史的な役割(15世紀)を回復しようとしているという議論もある。(9)この意味で、南シナ海の係争は単に中国国内のみならず、東南アジア諸国家でのナショナリズムの台頭として説明することもできよう。これは世界的潮流としての国際政治におけるナショナリズムおよびサブナショナリズムの一環なのである。したがって、南シナ海の領有権主張は例外ではない。
中国に関して言えば、北京も台湾もナショナリストである。そして、共産主義と反共産主義という両者のイデオロギーの大きな違いにも関らず、両政府とも共通の立場をとっている。すなわち、両者とも、南シナ海の島々は古来から中国に属する、という立場をとっているのである。両者と詳細な歴史的資料を示し、南沙諸島が紀元前200年に漢朝によって発見され、開発されたことを理由に、これらの島々が中国に属することに議論の余地はないとしている。(10)
中国の主張を強化するため、両政府は南沙諸島は1947年以来広東省の管轄下にあると主張してきた。さらに、両政府とも、日本は台湾およびPenghu島に対する権利、title、主張を全て正式に放棄し、1952年にこれらの島々を中国に返還した以上、南沙諸島は中国に属すると主張した。(11)