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中国の高圧的態度は、1992年2月の中国海洋法の公布によって最も明確に表れている。中国当局によれば、同海洋法の制度化は完全に国内向けのものであり、中国の南シナ海の広大な沿岸線および島々を法的に管理することを目的としている。この法は領有権を主張する他の国をの反感を買うことを意図したものではなく、係争地域に関する中国の主権の宣言によって不必要な警告を招こうしたものでは決してない。(3)しかしながら、この海洋法は、中国が他の宣言国に対して係争地域の法的な管轄権を与えられること意味するだけでなく、無害通航にも影響するのである。なぜなら、この海洋法によれば、非軍事的な目的のための船舶の無害通航は認められるが、軍事的目的を持つ船舶は中国政府の許可を必要とするからである。(4)同法第2項は次のように規定している。「中華人民共和国の領土には、中華人民共和国本土およびその沿岸の諸島、台湾および釣魚島、澎湖諸島、東沙諸島、西沙諸島、中沙諸島、南沙諸島の他、中華人民共和国に属する島々が含まれている。」(5)第2項の意義は、Natuna島(インドネシアおよびベトナムが領有権を主張している)を含む南シナ海の島々全ては潜在的に、必要であれば、中国領海の一部として領有権を主張することができるということである。もし中国が21世紀の東・東南アジアの海洋の超大国として台頭することになった場合、中国が境界の曖昧な海洋に自国の国益に都合よく境界線を引こうとしても、誰も中国を止めることはできないであろう。つまり、海洋法は中国には自国の「主権のおよぶ領土」の侵犯を防止するために軍事力を行使する権利を有することを宣言しているのである。(6)記録によれば、中国は東南アジアの小国に対して「覇権」を追及するものではない、と宣言している。しかし、覇権的行為は、大国がいかに善良であっても、パワーが増大するにつれて避けられないものとなる。パワーの性質は、一定・不変のままではないからである。パワーはゼロサムの形態をとり得るため、Xの利得はYの犠牲で生じるということは避けられなくなる。したがって、中国のパワーが増大するにしたがい、中国の敵対国は何らかの影響を受けるであろう。よって、ベトナムが中国の高圧的態度を懸念として認識してきたことは不思議ではない。中国がパワー行使を望み、南沙諸島で最多の島々と珊瑚礁を占有してきたベトナムを敵視するとすれば、最初のターゲットはベトナムとなるからである。(23)

 

1992年5月に中国がクレストン・エネルギー社と南シナ海南西部25000平方キロメートルを超える地域の石油・ガス探査の契約を交わしたことを公表したことも納得が

 

 

 

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