この行動には次に述べる3点の達成すべき目標がある。
・船上の人員の命の安全を最大限に守る。
・襲撃の間、乗組員が船舶の航行権を維持出来る様保障する。
・賊が出来る限り早く下船するようにする。
賊の襲撃防止に失敗し賊が船上にいる場合、後で法執行機関が任務を遂行するのに役立てるための、どんな些細な証拠も見逃さず守るのは乗組員の善し悪しによる。たいした効果もなく、危険の可能性が伴う抵抗を試みてエネルギーを費やすよりも、乗組員全員が事件の詳細一切を覚えておいて事件後すぐに報告がなされる様にすべきである。
多くの事件で、法執行機関に提出される賊に関する記述は非常に一般的で、100人の中から1人を見つけだせる詳細には欠ける。どんな人にも少なくとも何か1つは特徴があるものだ。例えば、男性の80%は平均身長の持ち主であるけれども、特定の組み合わせとして刺青を合わせ持つ人はあまりいないし、どんな傷跡だってユニークだ。マルタ号の乗っ取り事件の賊の一人は胸の大きな刺青と共に一方の手の指1本がなかったのが特徴であった。この様な情報は法執行機関には大変重要になる。極めて重要な証拠になる情報に注目する時、普通でない事が一番大切なのだ。
第10章5節 事件後の対応
賊が船を降りてしまったら、優先されるのは負傷者と船舶の安全である。しかし状況が許し次第、第10章7に述べられる様に、まず船主、法執行機関、救済調整センター(RCC)、IMO地域海賊センターに事件を報告しなければならない。
もし連絡が難しかったり不可能な場合は、たとえエージェントにでも、連絡が可能な人に連絡を取るべきである。例えば前述したヴァリアント キャリア号の場合、襲撃から30分以内に船はロンドンの船主のエージェントに連絡を取り、そこからIMBに連絡が入った。 IMBからシンガポールの海上警察に連絡が行き、海上警察は全力を尽くして素早くその船をシンガポールへ取り戻し、負傷者を病院へ収容する手配をした。
加えて、襲撃を調査するために乗船を望むどの法執行機関にもあらゆる便宜が計られるべきであらる。船がケジュールに従って運行する必要があるのは結構だが、適切な状況においては法執行機関はその船を港に向かわせる必要がなく、海上で乗船して取り調べを行うことが出来る準備があるのだ。