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だから、まず最初の防止策として、持って行く現金はなるべく小額にする事である。いくらかの現金を携帯するのが必要であるのはわかるが、今日の銀行システムは現金送金が世界中のどこにでも比較的簡単に出来るようになっている。

 

この問題について最も有効な手段は明らかに、海賊を船に乗り込む最初の段階で防ぐ事である。しかし最大限に努力をしても、ヴァリアント キャリア号事件の様に、一端船に乗り込まれてしまったなら、優先する手段として今度はいかにして損害を少なくとどめるかと言う事になる。

 

多くの船長、航海士、乗組員の経験がここで大いに役に立つし、次に上げるのは試行錯誤の結果得たテクニックとこうした人々による苦い経験から学んだ教訓の骨子である。

 

第10章1節

 

最初にしなければならない事は明らかに、有効な監視設備の設置である。(IMOの襲撃防御計画の第1番目は有効な監視設備の必要性と、明かり、監視、探知器の使用である。)これはちょっと目には簡単に実施できそうではあるが、船主が乗組員の数を減らしているのは何処においても問題であり、多くの場合余分な人手がないのだ。もし可能なら、船尾に監視を置くのはとても重要である。海賊はたいてい船尾から忍び込むが、その理由はまず突然に忍び込まなければならない場合、船尾からだとそれが簡単にできるからだ。2番目に、乗組員室にはたいてい明かりがついており、海賊側には船中の一部始終が見えるが、乗組員からは暗闇の出来事が見えにくい。海上の船の動き、スクリューによる波の動き、レーダーに映るフォームエコーなどによって小さなボートは見えなくなってしまうのだ。

 

経験のある乗組員は海賊を魚釣りの人間と見分けるのは比較的やさしいと言う。たいていの場合海賊船は影の様に後をつけてくる。どんな場合でも、危険地帯を通過する時は点灯する事になっている明かりだけをつけ、更に可能ならその明かりを船舶のサイドに当てるべきである。この論理の影には未知の物に対する人間の基本的な恐怖に対する反応がある。 海賊には船中でなにが起こっているかわからないが、乗組員側にはどんな動きも非常にはっきりと見える。

 

第10章2節

 

陸上海上を問わず、目的地や目的物に近づいて行く時に、出会う相手の反応がどんなものでどの程度効果的なものかを心配するのは、どんな分野においても犯罪者がもつ根本的な特徴である。「航行中の船舶のシナリオ」では、このような襲撃側の心理はいくつかの方法でつかむ事が可能である。

 

 

 

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