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のだ。その中の一人はその晩にこの船舶が襲撃を受けるかも知れないと警告した。暗くなってから明かりを付けていない2隻の船に乗った海賊が接近し、錨のチェーンをよじ登ろうとしたが、それに気付いた乗組員が汽笛を鳴らして追い返した。

 

第6章 今日の海賊行為

 

この論文の目的のために定義された海賊行為は、船が停泊中でも、港内でも、錨を下ろしている時でも、そして領海公海を問わず航行中の時でも起き得るのだ。

 

第6章1節 港内での海賊行為

 

貨物を積んだ船舶は港のある場所に常にたくさんいる盗人に取っては魅力がある。多くの国や港では、貨物が「そっと」盗まれてしまうのは、こうした貨物船にはよくある特有な事実であり仕方のない事で、この手の盗みは許容されていると言って良い。港にいる賊の中には新しい傾向として、組織を組んで暴力を行使して船舶を襲い、被害者に恐怖を抱かせ、人殺しを犯す程の狂暴さを持ちあわせた賊が現れている。

 

この論文執筆中にRPGによって記録された事件を見ると、最も問題があるのはブラジルの港である。インドのカンドラでも襲撃事件が多々起きているが、そこでは被害者から救援を頼む連絡が入っているにも関わらず、当局がそれに応じなかった。

 

恐らくドアラから連絡のあった1件が一番その問題をついているだろう。港に停泊中の船舶に8人の武装団が乗り込んできた。船舶の安全を期して舷門を上げていたので、賊は船のサイドからよじ登って来た。賊はコンテナをこじ開け、中身を盗み出したが、それを発見した見張りと甲板部航海士は、道で強盗にやられた時用のエアゾルに似た物質と思われる要撃防止用スプレーを使って挑戦した。賊の一人は金属製の備品を拾い上げ、それを航海士に向けて投げつけた。それは航海士の頭に命中し、その航海士は重傷を負った。警報機が鳴ったが、陸上側当局からは何の応答もなかった。

 

届け出のあったもう1件の事件は1996年7月8日にブラジルのアラツの港で起った。その事件では6人の海賊がキャピタン ベトカー号に乗り込み、乗組員3人を捕まえて船長室へ押し込んだ。そこで賊はナイフと銃で船長を脅し、船の倉庫を開けさせた上に船長室の家具と通信設備をぶち壊した。賊は船尾側甲板の乗組員を補らえてから更にもう5人の乗組員と中央甲板にいた船荷監督を縛り上げた。その後彼らの貴重品や現金2万ドルを略奪し、近くにつないであった快速モーターボートで逃げた。港湾当局は超短波無線による救済の求めにも答えなかった。超短波無線は被害者に取って当局と通信する唯一の方法であった。仲仕はこれがこの港で

 

 

 

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