日本財団 図書館


起きた3回目の武装団による略奪事件であると報告をしている。

 

短いが詳しく書かれたこれらの事件は次にあげる3点を証明している。1つに犯人側に武力行使の用意がある。2つ目に賊に立ち向かおうとする心意気は立派だが、一旦賊が乗船してしまったら、彼らに抵抗するのは無謀極まる行動である。最後に法執行機関側の対応が欠けている。

 

第6章2節 停泊中に起きる海賊行為

 

これは前に分類した海賊行為の延長線上にあるのだが、襲撃をする側にももちろん目的とする船舶に近づく事を可能にする「水上の便」がなくてはならない。このタイプの襲撃は荷揚げのためや停泊するために錨を下ろして待っている船舶に起きる。

 

1977年と1987年の間にこのタイプの襲撃がアフリカの西側にある港の外海域で頻繁に報告されたが、賊はカヌーを使って近づき、船舶の装備品、個人所有物、船荷、もやい網など、運べる限りの物品を盗んでいった。賊が素早く逃げる事が出来たのは、40馬力の船外モーターを積んだ丸木舟は例え警備船に応答するように求められても、逃げ足が警備船に優るものだからだ。この地域ではこうした襲撃事件が以前にずいぶんあったが、代わりに別のタイプの事件がより困難な傾向を見せていると信ずるに充分な理由がある。

 

ブラジルの港に停泊待ちをしている船舶は海賊による襲撃を最も受けやすい。銃などの武器をもった一団が乗り込んで来たと言う報告は1件ならずたくさんある。こういう賊は日和見主義的な賊が持つ目的と違って、このコンテナには何が入っていると言う様な知識を持ち合わせてやって来るのだ。

 

下記に述べる例はこうした港における襲撃事件がいかに危険なものかを示している。

 

1996年5月2日午前2時、サンマリノ号はリオデジャネイロに停泊した。午後11時30分に銃を持った賊5人が2隻のランチから乗り込んできた。賊は乗組員を脅し、コンテナ22個のシールを破り、結局目的であった2個のコンテナから品物を盗んだだけであった。

 

1996年6月23日午前1時45分、ボウ フォーチャン号は港側の中央甲板から武装した7人の一団に乗り込まれた。ボウ フォーチャン号はブラジルのサルバドールの港沖に錨を下ろしていた。見張りの一人は逃げようとした時に銃の床尾で頭を殴られ、もう一人の見張りは捕まった。賊はブリッジに押し入り、そこにいた執務中の航海士と見張りに20分間銃を突きつけたままでいた。それから賊は船長室に入り、金庫を破り開けて中の物を全て盗み、その後全船室を荒らし回って乗組員の現金、貴重品の全部を略奪した。それから乗組員全員を集め、ひざ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION