日本財団 図書館


地球温暖化や気候変動の知識の向上

 

・南極の氷棚底の大規模な侵食など、地球規模の気候変動によって引き起こされる可能性のある、極めて稀な、極端な場合に備えての保険

 

西太平洋(WESTPAC)IOC小委員会は、間接的にではあるが、アジア太平洋地域でのGOOSの実現に向けて前進している。WESTPACプログラムの多くは、直接的にせよ間接的にせよ、GOOSに関連している。地域的枠組みである北東アジア地域GOOS(NEAR-GOOS)は1994年に設立され、ロシア、韓国、日本に囲まれた海域のデータの共有を目的の一つに掲げている。WESTPACの目的は地域的なGOOSをWESTPAC全域に拡大することである。

 

アジア太平洋地域の海洋情報の重要性

 

アジア太平洋地域の特徴として、さらに2つの要素を言及しなくてはならない。これらの要素は同地域の海洋情報の重要性を強調するものである。第一は同地域の複雑な海洋地理であり、第二は海運交通が活発である同地域の海事事故に対する脆弱性である。

 

地理的要因

 

アジアの東部沿岸には、大陸、沖合の群島、そして島々の間に閉鎖海や半閉鎖海が連なり、日本列島を通じて樺太(サハリン)とカムチャッカ半島まで伸び、フィリピンを通じてインドネシア諸島と北オーストラリアまで伸びている。領有権問題のある尖閣諸島、西沙諸島、南沙諸島などを含めると、状況はさらに複雑になる。同地域の海洋地理は戦略的には非常に重要であり、地域的海洋協力の根幹を支えている。国連海洋法条約よって管轄範囲の拡張(すなわち、12海里領海、200海里排他的経済水域、インドネシア、フィリピン、および他の群島諸国の群島海域)が認められた結果、東アジアの海洋環境の大部分に領海(領有権主張が衝突あるいは重なり合っているもの)、資源の豊富な排他的経済水域が含まれており、領有権の衝突、重要な海峡、および海運のチョーク・ポイントが存在する。

複雑な海洋地理を持つこうした地域では、海峡に沿った海洋境界や海洋地域をめぐる明確な領有権の確定は、非常に困難な作業であり、こうした海域の管理には合理的な協力が必須であろう。東アジア域内の海もまた、海洋地理学・水文地理学的には相対的に複雑である。

なぜなら、これらの海には豊富な海洋生物、平たんでない海底の形状、そして速い潮流が存在することもあるからである。域内の海に関する総合的な知識は、資源開発、航海の安全、海洋環境管理にとって必要不可欠であり、潜水艦、迎撃潜水艦戦闘および水雷対策などの海軍オペレーションにとっても必要不可欠である。地域的な海洋科学研究、関連するデータの交換における協力が必要不可欠なのは、エコシステムと海洋地理的特徴は地域ごとにかなり異なり、特定の国家の主権に帰するということはあり得ないからである。

 

海洋安全

 

アラスカで起きたエクソン・ヴァルディーズ号の座礁、スペインの北西沿置きで起きたギリシャのエーゲ海号の浸水沈没、シェットランド諸島沖で起きたリベリアのBraer号、マラッカ海峡の北の入り口付近で起きたデンマークのMaersk Navigatorの火災は、危険な海上貨物送による海洋環境のリスクを示すものである。これらの船舶は国際的基準から危険であると判断されたわけではないであろうが、こうした事故により海上の危険な船舶の問題が注目されるようになり、「安全な船舶とよりきれいな海」という目標を達成するための地域的協力へのインセンティブを与えるのみならず、海運の国際的管理が強化されるよ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION