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を概観し、地域データベースの事例を示す。結論部では、将来の可能な方向について若干考察する。本稿はアジア太平洋地域の海洋情報・データ交換の範囲拡大を提案し、現在同地域のより総合的な海洋データ交換を阻んでいる政治的に微妙な問題を克服する必要を確認するものである。

 

概念

 

持続可能な開発

 

海洋および海洋資源の持続可能な開発は、海上貿易や沿岸水域管理に対する地域的利益と並んで、アジア太平洋地域の重要な経済的利益である。世界レベルでの沿岸・海洋環境の持続可能な開発の課題については、1992年にリオデジャネイロで開催されて国連環境開発会議アジェンダ21の17章に記載されている。(5)これは1982年の国連海洋法条約によって確立された世界の海洋の管理のためのレジームを基盤としたものである。

 

アジェンダ21には以下に示すプログラムにおいて国家のすべきことがリストアップされている。

 

・排他的経済水域など、沿岸地域の総合的管理および持続可能な開発

・海洋環境保護

・公海における海洋生物資源の持続可能な利用と保全

・国家の管轄下での海洋生物資源の持続可能な利用と保全

・海洋環境および気象変動管理のための不確実性への対処

・地域的協力・調整を含め、国際的協力・調整の強化

・小島の持続可能な開発

 

本稿で扱う沿岸・海洋水域管理に伴う困難は、インプットとして利用できるデータの不確実性である。例えば、アジェンダ21の17章(E)項は、海洋環境の気候・大気変動に対する脆弱性を指摘しており、沿岸・海洋地域の合理的な利用・開発には、こうしたシステムの現状および将来の状態を予測する能力の必要があると記している。(6)世界的規模で、人口が徐々に都会あるいは沿岸付近に集中し続けている。アジア太平洋地域の地理的特性を考えれば、沿岸水域の開発は大半の域内諸国の優先課題である。

 

技術協力と能力育成

 

アジェンダ21の17章の要請する行動は複雑で、革新的であり、大半の国家の能力をはるかに越えるものである。特に、発展途上国がこうした能力を育成して17章の義務を遂行し、持続可能な開発の道を歩むのは困難である。37章には発展途上国の能力育成の援助の手引きが記されている。(7)同章は能力育成のプロセスを次のように記している。

 

能力育成には、具体的に、国家の人的、科学・技術、組織的、制度的、そして資源の能力の育成が含まれている。能力育成の基本的目標は、関係者および関係諸国によって感知される環境の潜在的問題と必要に対する理解に基づき、開発政策の中の政策選択および実行手段に関連する重要な問題を評価・検討する能力を向上することである。(8)

 

発展途上国の能力育成には、当事国と関係する国連諸機関、地域的組織、先進国の間の、そして当事国間の協力が必要である。こうした協力の目的は、データ・情報、科学・技術的手段、人的資源開発の分野における発展途上国の能力を育成することである。要約すれば、能力とは通常、少なくとも人的資源、制度的およびそれらを可能にする環境、の3つ

 

 

 

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