日本財団 図書館


取締官自身が麻薬取引に汚染されていないという信頼を国家間で必要とする。)

新しい広域麻薬取引情報センターは、そのための一つの解決策である。国際海事事務局地域海賊センターにこうした部局を設け、海賊船やその動きについての情報を収集し提供することは、海上取引に対するものとして、検討に値する。

 

麻薬取引現場を押さえたり、密売人を逮捕する場所は、今後とも、ほとんどが港か領海、つまり管轄権と執行権が明確に限定されている場所であり、公海ではないのである。

しかしながら、奴隷輸送や麻薬取引と同様に、国際法上、公海においてはすべての国家が麻薬取引を取り締まることができることを考慮する必要がある。

さらに、(海賊について検討したような)国家間での合同の監視や施行協定は、特に、マラッカ海峡やシンガポール海峡のような領域が錯綜した海域において有効に機能するものと考えられる。

また、前述したように、地域ないし区域の非軍事的な「海上安全」協定は、麻薬取引の捜索、監視および取締りに関する規定を含む必要がある。

 

要するに、海上における麻薬取引に対処するうえではアジア太平洋地域の国々が、さらに協調、協力していくことが求められているのである。

麻薬取引は、ヨーロッパや北アメリカにおいて伝統的に麻薬の終着駅がそうであったように、東アジアにおいても近代化する都市社会の治安にとって、ますます脅威となっている。

東アジアの麻薬取引ルートを横切る中国の地理的な位置から考えれば、「麻薬戦争に勝利できるか否かは、中国の協力姿勢にかかっているという観測が西欧の麻薬取締担当官たちの間で広がっている」。

 

密入国

 

最近、海上ルートによる密入国問題が、ますます深刻になってきている。それが従来の(1979年代および1980年代の)「ボート・ピープル」と呼ばれた100万人を超えるベトナム難民ほどではないにもかかわらずである。

さらに、将来、中国で内戦が起これば、数百万人の難民が流出することになるだろう。

 

海路での密入国で近年、最も懸念されている問題は、中国の沿岸部に位置する省から日本やカナダや合衆国に(最近では、不法に入国する中国人グループにとって、長い島でもあるニューヨークの人気が高いという)密航する船舶である。

1993年に、日本は船や飛行機で日本に密入国しようとした中国人を5000人以上も逮捕している。この数字は4年前の数字の2倍である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION