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おなじく北アメリカへの密航船が示しているように、この海上における密入国問題の性格は変化している。

最近の報告書は以下のように述べている。

「香港、台湾、そして日本の密入国業者を含むシンジケート組織は、今やしっかりした作戦を遂行している。(中略)かつては、釣り船などを使った小規模な密航であったのが、今では、貨物用船を使い100人から150人を積載できるまでになっている、と専門家は分析している。」(一部抜粋)

 

この密入国問題は、地域の安全保障関係にとって、まだ、それほど憂慮すべき問題とはなっていない。にもかかわらず、アジア太平洋地域における密入国を抑制するうえでの協力はいまだ限られたものであり、強化されるべきである。

移民の原産国となっている国々の当局が、密出国を阻止し密入国業者に対する断固たる措置を講ずるために、各国間のいっそうの対話が求められている。

地域の警察や出入国管理事務所(特に、中国、香港、台湾、日本)が、この問題について、有効な協力関係を発展させる必要がある。

最後になったが、密入国問題を解決するための協調が、日中海上保安当局の「非公式」協議、また中国と台湾の海峡交差問題協議において、それぞれ議題として取上げられるべきである。

 

密入国の疑いのある船舶を追跡することは、また別の問題である。ここでは、すでに機能している国際海事事務局地域海賊センターで収集され公開されている情報を活用し発展させることが有効である。

また、海賊問題や麻薬取引問題の場合と同様、海路による密入国を発見し対処するための手続きは、地域ないし区域での非軍事的な「海上安全」協定の一部をなすものでなければならないのである。

 

473ウイルトン・パーク会議提出論文

“南東アジアの安全保障:高まる緊張への対処”

1996年7月9日〜12日

 

 

 

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