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おいて、最悪」(Bird=Gendron)という言葉にあらわれている。そのような付加価値税は地方政府の課税管轄権をきびしく制限し、全国一律の税率と複雑な税務行政を必要とする。また税収入が製造段階が活発な地域に偏在する傾向をうむ。このような政策目標は、むしろ税収分与方式でも達成できる。もちろん、ブラジルの付加価値税を改革する気運がまったくないわけではない。1996年の税制改革では、全輸出品目に例外なくゼロ税率を適用される一方、投資財購入に係わる前段階税額控除も導入された。しかし連邦政府はひきつづき、IPIとICMSの課税ベースの統一、仕向地原則の採用と複数税率の整理、州内・州間取引の差別税率廃止を提案しており、今後の動向が注目される注14

 

5. 精算システムによる仕向地原則

 

租税論の諸潮流を検討しても、現時点では仕向地原則の優位は確固たるものだといえる。原産地原則は第一に境界調整がいらないこと、第二に国家間の租税調整のための複雑な精算システムもいらないなどの理由で正当性があたえられてきた。よく知られているように60年代のECノイマルク委員会における議論は第一の問題を焦点としていた。

しかし共通税率による原産地原則に合意ができたとしても、租税境界の必要性がなくならないとするクノッセン説の登場以降、第二の論点に議論の焦点はうつりつつある。一方、原産地原則が資源配分に中立的であるために必要とされる賃金・為替レートの伸縮性は、実際のEU諸国ではすくなくとも短期的には実現する見込はきわめて少ない。これにたいして、仕向地原則にはふたつの基本的な目標、すなわち主権国家の課税自主権を最大限に尊重しつつ経済的中立性を満たすことができる。したがってシャウプ及びクノッセン(Shoup=Cnossenn)を頂点とする租税論のフロンティアは、仕向地原則の優位を前提にして、租税境界なしにいかに位向地原則を実施するかというより実務的な問題に焦点をあてつつある。

しかしシャウプ及びクノッセンの議論はEUを念頭においている。このアイデアを一国内の地方政府間に適用したのがポダー(PoddarS.N)である。ポダーによれば、仕向地原則にはふたつの基本的な目標、すなわち地方政府の課税自主権を最大限に尊重しつつ経済的中立性を満たす注15。仕向地原則では財貨・サービスの提供から徴収された税収入はその最終消費が発生する課税管轄地だけに帰属する。製造、卸売段階にある地方政府が税率決定権を自由に行使しても、最終消費者の負担は小売価格と小売段階の地方政府が決める税率によって決定されるからである。つまり地方政府間の税率の違いは、原産地原則とは異なって、生産活動の立地や交易パターンを歪めない。たしかに税率のより

 

注14近年のブラジルの付加価値税改革について、Ter-Minassian,T.[1997]"Brazil,"in TerMinassian,T.ed,.Fiscal Fediralism in Theory and Practice,International Monetary Fund.が参考になる。

注15Poddar S.N.,op.cit.

 

 

 

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