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準私的財を供給する労働に従事すればよい。それに代替して地方税を納税し、地方政府が供給するとすれば、個人が一定期間の労働による対価を地方税として納税すればよいことになる。したがって、地方税の基幹税は所得比例税が望ましいということになる。

 

3 税源配分と税源調整

こうして地方政府は現金給付による所得再分配ではなく、現物給付による所得再分配を担うという意味でも、所得比例税が地方税として正当化される。ところが、所得比例的に課税するにしても、所得の生産、分配、支出という三つの局面のいずれでも課税することができる。しかも、地方税ではこの三つの局面に対する課税をバランスする必要がある。地域社会には生産機能に特化している地域社会もあれば、生活機能に特化している地域社会もあるからである。しかし、その地方政府の有権者である住民に対する課税、つまりメンバー・シップ課税が地方税のコアとなる必要がある。

それは所得の分配局面で課税される地方所得税ということになる。あるいは、その代替税として地方消費税が考えられる。ところが、消費課税には租税の財政的外部性という問題がつきまとう。つまり、第3図に示したように、租税輸出や租税競争という問題が分かち難くつきまとう。そのためこれまでの税源配分論では、消費課税は製造段階に近い課税を国税に、消費段階に近い課税を地方税にという原則が主張されてきたのである。

租税輸出とは地方政府が他の地域社会の住民に、地方税を負担されることをいう。租税輸出は他の地域社会の住民に直接、影響を与え、租税による外部性の直接効果という。

これに対して租税競争とは地方政府が工場誘致などを目的に、地方税を軽減することをいう。ある地方政府がこうした措置を採用すれば、他の地方政府の財政に収入の減少というクッションを通じて、他の地域社会の住民に間接的に影響を与える。そのために租税による財政的外部性の間接効果に分類されている。

しかし、こうした租税輸出や租税競争という租税の財政的外部性の問題は、独立税に固執せずに、多様な地方税の課税形態を選択すれば、ブレイク・スルーすることができる。つまり、税収分離方式でも重複方式、さらには税収配分方式を検討すれば、国税から地方税への移転の可能性が議論の遡上に上ることになる。それも消費課税に限らず、所得課税や資産課税についても同様のことがいえる。このように税源配分調整方式を視野に入れて、税源配分を制度設計する時期に差しかかっていると考える。

 

 

 

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