四 新たな税源配分を目指して
地方政府機能の拡充という政府機能の新たな展開に対応して、所得税、付加価値税、さらには法人税という基幹税(key tax)を国税から地方税に移譲せざるをえない。その上で地方所得税を基軸にし、多様な税源配分調整方式を取り込んだ地方税源の拡充が必要だということが、ここでの結論である。ボーダレス化に対応して、国税所得税に与えられていた所得再分配機能からの部分的解放は、所得税の地方税化への道を拓くことになる。しかも、税源配分調整方式を検討することによって、所得税の地方化だけでなく、それを補完する地方税をも拡充しなければならない。こうした地方税体系の構築に税源配分調整方式の検討は飛躍的な自由度を与えることになる。
こうした税源配分調整方式を視野に入れた税源配分論は、これまでの特定補助金と一般補助金による集権的な垂直な財政調整をブレイク・スルーすることにもなる。したがって、こうした検討の延長線上に、「地方分権時代」の税源配分の制度設計を考えるべきであろう。
追記 本稿に関する詳細な議論は、堀場勇夫・神野直彦「租税思想としての税源配分論の展開」(地方財政学会論文集、刊行予定)、堀場勇夫『行政の役割と税源配分について』(東京都主税局、1995年)を参照されたい。
本稿は、「地方税」(地方財務協会編)平成9年10月号から転載した。