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三 税源配分の大転換

 

1 政府機能の新展開

資本移動や住民移動を管理しないオープン・システムの地方政府には、所得税や法人税のような所得再分配機能や経済安定化機能に優れている租税を課税できないことを、政府機能基準の税源配分論は想定している。しかし、1980年代になると、情報化の急速な進展とともに金融自由化が進み、経済のボーダレス化、グローバル化という現象が顕著になる。

ところが、経済がボーダレス化していくと、中央政府もボーダーを管理する能力を失ってしまう。ボーダを超える自由な資本移動は、法人税や累進的所得税という所得再分配機能や経済安定化機能に優れた課税を困難にする。そのため国税も、所得課税から消費課税へ、あるいはフラットな課税という地方税としてふさわしいと考えられてきた税源へとシフトしていく。

そうなると法人税や累進的所得税と、現金給付との組み合わせによって、セーフティ・ネットとしての生活保障機能を果たしてきた中央政府の所得再分配機能は機能不全に陥ることになる。ところが、公共サービスが生活保障のラスト・リゾートとして機能することへの需要圧力は、家族機能や地域共同体機能の縮小とともに、逆に強まっていく。

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