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そうだとすると国税と地方税との税源配分をデザインする際に、独立税という課税形態に固執する必要はないと考えられる。そこで、積極的に地方税の課税形態を、国税と地方税との税源配分を調整する税源配分調整方式として位置づけると、地方税に配分される税源が飛躍的に拡大する。それによって地方政府機能の拡大に対応した税源配分のあり方を問うべきだというのが、ここでの主張である。

 

2 移動性基準から政府機能基準へ

とはいえ、これまでの税源配分論では地方税を独立税に限定した上で、国税と地方税との税源配分論を展開してきた。しかも、前述のように地方政府がボーダを管理しない政府であるという前提から導出される税源配分論が唱えられてきたといってよい。

まず、不動産税のような移動性の低い税源に課税する物税は地方税に、間接税のような移動性の高い税源への課税は国税に、所得税のような移動性が中間的な人税は中間レベルの地方政府に配分するというように、税源移動性を基準にした税源配分論が、地方政府がオープン・システムの政府であることを前提に展開される。しかし、こうした税源移動性基準の税源配分論は、政府機能として公共財の供給という資源配分機能に、所得再分配機能や経済安定化機能が加わるようになると、政府機能基準の税源配分論に取って替わられるようになる。

もっとも、この政府機能基準の税源配分論も、中央政府がボーダを管理する政府であり、地方政府がボーダを管理しない政府であることを前提にしている。こうした前提にもとづいて、所得再分配機能と経済安定化機能は、もっぱら中央政府が担う政府機能として位置づけられてきた。住民の入退出が自由なオープン・システムの地方政府が所得再分配機能を担えば、富者に対する貧者の絶えざる追跡効果が生じてしまう。

経済安定化機能についても、地方政府の規模、金融政策との運動の不可能性、地方債の外国債と同種の問題の発生などが挙げられ、中央政府が担うものとされてきた。つまり、地方政府は境界を管理しない政府であるが故に、所得再分配機能や経済安定化機能は、地方政府には担いえないとされたのである。

こうした政府機能分担論から導き出される税源配分論は、所得再分配機能や経済安定化を適した所得弾性値の高い累進的所得税や法人税を国税に配分し、税源移動性や偏在性の低い不動産税などを地方税として残すという主張となる。こうした主張にもとづけば、多収性のある基幹税(key tax)は国税に配分され、中央政府に税収が集中するという集権型社会にふさわしい税源配分が出現することになる。

 

 

 

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