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さらに、地球規模の環境問題への関心の高まりを背景として、環境問題に関する総合的な対策の一環として、税制面についても、いわゆる「環境税」を創設すべきではないかとの議論があり、その際には、地方公共団体が課税主体となる「地方環境税」についても検討される必要がある。(「地方環境税」については、後出「4 地方税への税源配分の具体的方策」を参照)

 

(3) 地方公共団体の役割の拡充に対応した税源配分の方策

 

情報化に伴う経済のボーダーレス化や金融自由化、高齢化などの進展は、これまで国税にふさわしいとされてきた法人税や累進的所得税による所得再分配機能や経済安定化機能に優れた課税を困難に、中央政府による法人税や累進的所得課税及び現金給付による所得再分配機能や経済安定化機能の発揮を困難にする。

他方、これらの社会経済の変化に伴い、地方公共団体の提供するサービスは、警察、消防、公共事業などの資産保護や資産価値を高める地方公共財の供給から、社会福祉、医療、教育などの現物給付を内容とする対人サービスへとその中心を移して行く。

従来、地方税は、税源の移動性や偏在性の低い不動産税を中心として考えられてきた。この観点からみれば地方税としては固定資産税が理想的な税となる。

しかし、地方政府機能が拡大してくるにつれて、これだけでは十分な財源を確保することが困難であり、税収を確保する必要性が生じるため、所得税、消費税、法人税という基幹税を国税から地方税に移譲せざるを得なくなる。

また、課税の根拠から考えても、老人の養護や幼児の育児などの対人社会サービスは、家族や地域社会の共同作業や相互扶助で実施されていたが、家族機能の縮小等により、そのようなサービスも地方公共団体が引き受けざるを得なくなっている。従って、地方税においても、住民に対しそのような共同作業の代替として比例所得税を課税することが、正当化される(個人住民税の比例税率化の検討については後出)。また、所得の生産、分配、支出という三局面に対するバランスを図るためには、比例所得税の代替としての地方消費税を課することが望ましいと考えられる。

このように、国と地方の税源配分を考える場合には、比例所得税や地方消費税は有力な選択肢であり、また、地方税に配分される税源を拡充する観点からは、地方独立税に固執せず、税源配分調整方式を視野に入れた税源配分の制度設計を目指すことが考えられる。(後出の第二部 神野委員の論文を参照)

 

 

 

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