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ところで、安定性と伸長性は、法人所得課税に見られるように、特定の税目について見ると、しばしば矛盾する面がある。この点に関連して、アンケート調査では、安定性と伸長性のいずれを重視すべきかという観点からの質問(問3)に対しては、「地方公共団体は、地域住民に身近で、かつ、必要なサービスを常に提供し続けることが必要であることに鑑み、できるだけ景気変動の影響を受けない安定的な税収構造が重要である。」という選択肢の回答が7割以上を占めた(176団体、74.8%)。これに対し、「社会福祉の充実や環境対策など今後とも増大する行政需要に対応して行くためには、安定性も必要ではあるが、むしろ伸長性のある税目を中心とした税収構造が必要である。」という回答も2割程度見られた(38団体、16.2%)。

この結果を見ると、多くの地方公共団体は、安定性をより重視していると考えられる。

 

(2) 少子化・高齢化、経済のグローバル化、情報化などの経済社会の構造変化への対応

 

国際社会の中での調和を図りつつ、我が国経済社会の活力を維持・向上させ、個人や企業の自由な選択を重視する成熟化社会に対応して行くためには、経済活動にできるだけゆがみを与えないような中立・簡素な税制が望ましい。

また、少子化、高齢化、経済のグローバル化等、経済社会の様々な構造変化の中で、そのような変化に対応して地方税制をどう構築して行くか、という観点からの検討も必要である。

例えば、少子・高齢社会においては、勤労世代が人口に占める割合が小さくなるため、勤労世代に限らずより多くの人々に社会を支える費用を負担してもらうために所得課税を税制の中心に据えつつも消費課税にウェイトを移すべきではないかとう議論があり、また、経済のグローバル化への対応、経済構造改革の推進の観点からは、法人課税の課税ベースと税率の適正化や個人所得課税(所得税・住民税)の最高税率の引き下げが課題となる。

また、資産課税のなかで、土地に係る固定資産税の税負担の水準が検討するにあたっては、バブル崩壊後の土地をめぐる状況の変化を考慮にいれつつ、その均衡化・適正化を進める必要がある。

 

 

 

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