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(4) 国から地方への税源移譲について

 

? 地方税源を充実しようとする場合、国民負担率との関係をどう考えるかという問題がある。国民負担率は、高齢化の進展による社会保障費の増大等により、中長期的に上昇の傾向にある。国民にとって過度の負担は、可処分所得を小さくし、社会全体の活力を損なうおそれがある。このため、高齢化のピーク時(2020年頃)においても50%を下回ることを目標とするとされ、国民負担率の上昇は極力これを抑制する必要があることが指摘されてきた。(平成5年10月、第3時行革審最終答申等)

国民負担率は中長期的に見てある程度上昇せざるを得ないことは事実であるが、国民負担率のできる限りの抑制が大前提となっている以上は、分権を進めるが故に国民負担率の上昇を許容するという考え方は困難であり、地方税の充実に当たっても地方税独自の増税は自ずから限界があると考えられる。さらには、分権型社会においては、住民に身近な行政を中心として地方公共団体の役割は益々増大することにかんがみれば、地方税源を充実するためには、中長期的に国から地方への税源移譲を検討することも重要な課題である。

(注) 「税源移譲」の用語の定義は使う人によってまちまちであるが、ここでは、「ある課税対象及び課税標準を国税・地方税が共通にしている場合において、当該国税又は地方税を減税し、その分、当該地方税又は国税を増税することにより、実質的に見て税源を移すこと」と定義することとする。従って、国税が減税を行い、他方で地方税が増税を行った場合においても、両税が課税対象及び課税標準を異にする場合は、ここでいう税源移譲には含まない。

? 国と地方の税源配分は、国と地方の役割分担に応じたものであることが必要である(地方分権推進法第6条)。すなわち、国と地方の税源配分は、中長期的に見れば、国と地方の事務配分、行財政需要等にふさわしいものとしてゆく必要がある。

そして、当面は、国庫補助負担金の廃止・縮減を行っても引き続き当該事務の実施が必要な場合や国から地方公共団体への事務権限の委譲が行われた場合において、当該事務の実施に相当規模の財源を必要とするような場合に、税源移譲が検討対象となる。(資料18 税源移譲の過去の例及び地方分権推進委員会第2次勧告(p26)参照)

 

 

 

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