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いった事業の支援を考えていくことも必要になるのではないだろうか。(図10)

 

3 今後の課題と展望

最後に、今後の課題と展望についてまとめておきたい。

(1)課題

?関心があっても行動に結びつかない職員、市民

すでに指摘したとおり、環境問題に対する人々の関心は高い。しかし、その人達の多くが何らかの行動を起こすかというと、答は極めて懐疑的である。

人間による環境汚染を世界で最初に警告した書として知られるレイチュル・カーソンの「沈黙の春」が世に出てすでに35年が経過している。最近NHKなどで取り上げられ、わが国でも話題を集めるようになった「環境ホルモン」の問題についても、すでにこの本の中で指摘されている。にもかかわらず、いっこうに事態が改善されないのはなぜか? カーソンは次のように述べている。「大勢の人間がDDTに直接触れたのに誰も害がなかったので無害だということになってしまった。」「人体内の普通の化学作用では、わずかの原因から思いもかけない結果が出たりする。例えば、1万分の2グラムというごく少量の要素が有るか無いかで健康か病気に分かれる。」まさに、環境問題は、我々の現在の生活には一見何の影響もないように見えるが、将来に極めて深刻な害を及ぼすという性質を持ち、いわば「静かなる時限爆弾」とも呼べるものである。私たち人間は悲しいことに、時限爆弾が炸裂するまで爆弾の存在に気がつかない。

?問題の所在は理解しても生活水準を落とせない市民

「静かなる時限爆弾」について、多少なりとも理解したとして、生活水準を切り下げてまで行動に移すことができるであろうか。地球環境問題の難しさは、これまで人類が正しいと信じ、進歩と発展と考えてきた価値観に対し、根本的な疑問を呈し、結果として生活水準を切り下げざるをえないような価値観の変革を迫らざるをえないという点にある。もちろん、依然として地球温暖化問題などに対し、楽観的な専門家もいる。その多くはいずれも市場と技術に全幅の信頼を寄せている。科学技術によって生じた問題は科学技術によって解決できるという信仰である。

しかし、はたしてそうであろうか。現在、直面している問題はまさに人間のおごり、自然に対する傲慢さに起因しているのではないだろうか。確かに

 

 

 

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