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人間の欲が文明をこれまでに発展させてきた。人間は欲を持つことで夢を追及し、一見不可能に見えることでも可能にしてきた。それを人々は進歩と発展と呼んで賞賛してきた。この様な人類のあくなき探求心と努力の結晶が、今日の文明を築き、それを人々は繁栄と呼んできた。しかし、皮肉なことに、そのあくなき進歩と発展により、この地球が滅びるかもしれないという不安にさいなまれているのが、今日の私たちの姿ではないだろうか。

どこかで自分の足元を見つめ直し、「足るを知る」ことの大切さを認識しなければ人類の明日はない。しょせん、人間は、多くの種のひとつにすぎない。これ以上の物理的成長は望まないと一人ひとりが決心できるか、今、問われているのは自然と人類との関わり方を見直し、新たなるパラダイムを構築することであろう。

?地域の限界、相互の協力

生活水準を切り下げるといっても、すでにあるレベルに達している国はいい。発展途上国の不満が同様に地域内でも見られる。周辺のインフラが遅れているところは、まだまだインフラ整備を必要とする。さらに、高齢化社会、高度情報化社会といった否応なく到来し、対応を迫られる課題に対して対応していくことは、当然にエネルギー消費型にならざるを得ない。

高度情報化社会は同時に電力多消費型社会であるし、高齢者、障害者に優しい社会は、きめこまかなサービスを提供する意味においても、近代文明の利便性、技術を最大限に活用する社会でもある。この様に、先進国、発展途上国ともにエネルギー多消費型の構造が今後も続くことが不可避であるが、そういった中で、この問題を解決するには、地域をこえたグローバルな連帯と協力こそが問題解決に不可欠であろう。

(2)今後の展望

以上3点について課題を指摘してきたが、21世紀において人類が直面する最大級の問題ともいわれる、この地球環境問題に対して暗い面ばかりではない。それは、この問題に対する様々な運動が世界の各地域で起こりつつあることである。わが国においてもすでに、最近のボランティア、NPO、グランドワークといった様々な運動の中で環境問題が取り上げられつつある。こういったひとつひとつの流れが大きな流れとなった時、事態は少しずつ改善に向かうと信じたい。

例えば、環境保全と経済成長はトレードオフの関係にあるという意見がある。確かに、一時期、環境保全に配慮することは民間企業にしてみれば製品の製造単価を上げ、売り上げを落とすことになるかもしれない。しかし、中長期でみた場合、全体の流れができてしまえば、むしろ、その流れに乗った形での製品開発こそが市場チャンスを生む可能性が大である。このことはかつてのマスキー法をめぐる競争の際のわが国自動車業界の対応をみれば容易に理解できる。

同様のことが他の製品についてもあてはまるといえよう。その点では利に聡い民間企業の方が官より、対応が早い。

私たち、地方公共団体ができることは、様々な運動、あるいは、機会を通じて、この問題の重要性と深刻さを訴え、市民の意識を少しずつ変えていくことではないだろうか。そのためにも、本市としては一見無謀とも思える二酸化炭素削減10%の高い目標を掲げた。今後は、その意味するところを十分市民に説明をしていく義務を市として負ったことになる。必要な情報を開示し、積極的に提供しつつ、職員らが先頭にたって市民の中に入り、この問題を訴えかけていくことが必要になってくる。

市民自身がこの環境問題をきっかけとして、問題をともに考える中で住民から真の市民へと自立していければ、21世紀は明るいのではないだろうか。いずれにせよ、自立した市民の形成こそが21世紀の展望を切り開くと信じて疑わないが、その試金石として地球環境問題は私たちに様々な問題を投げ掛けている。

 

 

 

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