イ 道路管理者としての裁量を行使するうえでの基準として、環境権を使用できないか。
道路法第24条の許可基準について、道路法の目的や意図以外のものを考慮することは「他事考慮」として許されない。
以上は、通説、判例に従い法律上の整理を行った。現実にどのような対応を行うかは次元の異なる問題である。
(3)可能性を求めて〜緑の地区カルテ
(1)(2)でみたとおり、現行の法律枠組みの中で、地域住民、開発者の合意をとりつけることは大変にむずかしい。今後、規制緩和に伴う容積率の拡大は地域社会に大きなひずみを生んでいくことが予測される。
ここでは、「住宅・宅地事業調整要綱」の目的・意義を確認したうえで、いくつかの可能性を考えてみたい。
? 「住宅・宅地事業調整要綱」の目的・意義
川崎市は、これまでも、「住宅・宅地事業整要鋼」による事前調整を行ってきた。「住宅・宅地事業調整要綱」の目的は「住宅の建設及び宅地の開発の事業に関して必要な基準及び手続を定めるとともに、当該事業の実施に必要な情報を提供することにより、事業の適正化・円滑化に寄与し、もって良好な住宅市街地の形成を促進すること」である。すなわち、良好なまちづくりという明確な目標に向けて、自治体独自の政策に対し開発者の協力を得ることである。
「住宅・宅地事業調整要綱」は、次のような意義を有する。第一は、住宅・宅地開発において、良好な生活環境形成に必要かつ合理的な行政指導を行うことである。第二は、地域特性に応じた防災上・安全上必要な施設について、公共と民間の適切な分担による整備を行うことである。第三は、大規模な土地利用転換が行われる場合に、川崎市として必要な総合的判断を行うことである。第四は、地域固有のまちづくりに向け、自然的、歴史的環境保全を図ることである。
時代状況は大きく異なり、大規模開発が主流であった時代から成熟の時代へと移りつつある。「住宅・宅地事業調整要綱」の対象も、市街化が進行中の地区での充填型や既成市街地における更新型の開発が中心である。また、住環境の整備、特に、基盤未整備地区については、法律の範囲内だけでの個別開発を許可するだけでなく、地域の特性に応じた規制・誘導が必要となっている。ますます、「住宅・宅地事業調整要綱」の機能拡充が必要となっていく。
? 可能性を求めて〜緑の地区カルテ
斜面緑地に関する一連の問題提起から学んだことは、川崎市が各地域ごと、具体的で明確な都市像を持ち得ていないことである。確かに、基本構想、基本計画、「整備・開発・保全の方針」など、都市の大きな方向性は決められているが、具体的な都市像は一部の地域(建築協定・地区計画、再開発地区など)に限定されている。街並みの一部となり市民の生活空間となった斜面緑地をどのようなものとして位置づけるか、具体的な整備方策は作り上げられていない。川崎市として、都市の緑保全に向けた積極的な意思を地区ごとに明示することが必要だと考える。都市緑の保全は、環境局だけの問題ではない。また、開発指導の現場のみに過重な負担をもたらすものではない。「サスティナブルシティ・かわ