ここでは、本件事案についての法律上の論点整理を行っておく。
? 都市計画法第29条に基づく開発許可申請の留保又は拒否(不許可)について
ア 行政指導の継続
最高裁判例(昭和60年7月16日)の考え方がリーディングケースとなる。行政指導は相手方の任意の協力を前提としており、事業主が行政指導への不協力・不服従の意思を表明した場合はこれ以上の行政指導の継続は違法となる。本件事案について開発許可申請が行われ、開発許可に係る標準処理期間を経過し、「開発許可申請についてこれ以上待てない」という真摯かつ明確な意見の表明があれば、これ以上の行政指導は違法となる。(同判例の「特段の事情」は極めて限定されたものと考えるべきもの。「建築主が行政指導について不協力・不服従の意思を表明している場合には、当該建築主が受ける不利益と右行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較考量して、右行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、確認処分を留保することは違法である。」)
イ 都市計画法第33条の「開発許可の基準」との関連
政令第25条第4号(接道義務)に開発許可時点では適合していないが、既に都市計画法第32条の同意(道路管理者としての承認)を行っていることにより、将来確実に道路が建設されるものであり、許可基準に適合しないとは言えない。
? 道路法第24条の申請(許可)について
ア 市道の維持管理は自治体の固有事務であり、道路管理者の自由裁量として申請を拒否(不許可)できるか。
開発者は当該道路法敷について、道路構造令や都市計画法の基準に合致する道路に改修すると申し出ているものであり、自由裁量といっても道路法の目的を逸脱することが許されるものではない。拒否(不許可)は、権限の逸脱又は濫用にあたる。(既に都市計画法第32条の事前協議において、道路管理者としての合意をしており、道路工事に関する細かい内容の指導も行っている。自由裁量、それ自体の裁量範囲は収縮したものと考えられる。)