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札幌市における環境行政の現状と課題

〜21世紀の都市は環境と調和できるか〜

札幌市企画調整局企画部企画課長

坂上 崇男

 

は じ め に

札幌市は、開拓使の島判官が明治2年(1869年)に札幌本府建設に着手してから今年(1998年)で創建130年を迎える。現在の中心市街地の原型は、この開拓使の時代に創られたといっても過言ではない。幅員約100mの大通、格子パターン(碁盤目状)の街区、条丁目方式の町名などは、現在も札幌市街の特色となっている。

札幌以外に碁盤目状の整然とした日本の都市の例として思い浮かぶのは、やはり藤原京から平安京に至る古代の都であろう。これらの都は中国の長安をモデルに造営されたものだが、従前は、時の天皇の恣意的な命によって遷都を繰り返したとする説が一般的であった。しかし、近年の発掘調査の結果、新しい仮説が有力になりつつあるという。すなわち、これらの都は、いずれも都市計画上の欠陥があり、そのため都市環境が悪化したことにより、見捨てられたのではないか、というものである。

古代日本では、本格的な都市建設やそのための計画立案の経験がなかったため、都市環境や衛生などに対する知識が不足しており、上下水施設の不備により疫病が蔓延したり、大仏建立の金メッキ工事により水銀中毒が発生するなど、これらの見捨てられた都は、庶民のみならず為政者にとっても、そのまま住み続けることが困難な状況になっていたのである。千年の都となった平安京でさえ、右京は低湿地帯であったため、早い時期に衰退してしまっている。

このように、住む者にとって快適で魅力的であるはずの都市も、環境に対する配慮をおろそかにすると、そのまま住み続けることが困難となり、やがて衰退してしまう。これは、今日、都市と環境の問題を考えるとき、重要な鍵になると思う。

現在、札幌市では、2000年からスタートする新しい長期総合計画の策定作業を進めており、その指針として「札幌市基本構想」の改定案を議会で議決したところである。この基本構想では、まちづくりの基本的な方向として、「市

 

 

 

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