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り、大都市においては、地球の環境保全に対して責任を有する主体の一つとしてこのような取組みをさらに充実させることが期待されている。

 

? 大都市における環境行政の今後の在り方

環境問題が産業公害から都市・生活型公害、地球環境問題へとその対象領域を拡大することに伴い、施策の対象やその深さも広がっているところであり、また、地方分権の流れを受けて、地方公共団体は地域の環境と開発に責任を有する主体としてその権能を拡充しつつある。本章においては、前2章を踏まえ、政令指定都市を始めとした大都市における環境行政の今後の在り方等について述べることとする。

1 基本的な考え方

環境問題の捉える範囲が従来の産業公害から、自然環境の保全・創造、あるいは人類の生存基盤そのものを脅かす地球環境問題にまで広がっていることは既に述べたが、この環境問題の対象の拡大傾向は、今後とも続くことが予想される。人類の存続する基盤を保全し、地域住民が豊かで快適な暮らしを送るための施策を「環境行政」と定義付けるならば、国を含めた全ての行政主体の施策は、もはや環境と無関係ではあり得ないだろう。以下、これらを踏まえつつ、大都市における環境行政における基本的な考え方について、今後の課題を考察することにする。

(1)環境行政の「プライオリティ」の向上等

環境は、その性質上、全ての住民が無関係ではいられないものであるが、一方で、従来の産業公害等を除けば、必ずしも地方公共団体における政策のプライオリティが高くならない点が指摘できる。その理由としては以下のものが考えられる。

? 地域住民の環境に関する理解と認識が必ずしも十分でないこと

? 環境の性質上、他人或いは他団体の努力の結果に「タダ乗り」できること

? 地道な施策の積み重ねが重要であり、また、その効果が目に見えにくいこと

? 地域住民の当面の死命を制する問題にはなりにくいこと

また、環境に対する取組みが、関係行政分野を幅広く含むため、独立した環境担当部局のみではカバーしきれない(例えば、いわゆる「エコロジー」担当部局と「ゴミ・廃棄物」担当部局が異なるなど)、あるいは調整が困難となる場合があることが指摘されている。当事者間のパートナーシップを構築し、効果的な施策を推進していく上でも、環境問題を都市行政にどう位置付けていくかは重要な課題の一つであろう。

(2)当事者のパートナーシップの形成

地域住民の生存を脅かす問題は、産業革命期あるいはそれ以前においては、天災や伝染病であった。これらへの対応は一義的に行政主体が責任を持って行ってきた。戦後の高度成長期を経て、これに産業公害問題が加えられたが、この時期の環境行政は、汚染者の行為を取り締まる規制行政として展開された。しかしながら、新しい環境問題、例えば、自動車公害などの都市・生活型公害、或いは地球環境破壊問題については、加害者と被害者の区別は必ずしも明らかでなく、その原因の多くは住民一人一人の生活様式にある。そこでは住民の環境学習を推進

 

 

 

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