日本財団 図書館


政令指定都市をはじめ地方公共団体においても、交通公害対策として公共交通機関の整備やバイパス道、交通管制システムの充実等を行うなど、環境への負荷の少ない都市づくりに取り組んできた。また、都市・生活型公害の解決には住民の生活様式の見直しが必要なことから、環境学習、環境教育をはじめとする各種普及啓発活動を推進している。

(2)快適な環境の形成

生活水準の向上に伴って、特に大都市においては、静けさ、身近な緑や水辺など自然とのふれあい、街並みの美しさなど生活環境の質の向上が求められるようになってきた。この環境の質に対する欲求の高まりは、急速な都市化の中で自然や歴史的環境との結びつきが希薄になってきている生活環境にこれらのものを取り戻し、快適な環境の創造を求める傾向となって現れてきている。このため、快適な環境を目指し、地域住民及び地方公共団体の主導により、地域の創意工夫を活かした「地域づくり」、「まちづくり」活動が期待されている。

 

? 大都市における環境行政の現状と課題

本章においては、前章で述べた国レベルにおける環境行政の骨格をなす、(1)「循環」を基調とした「モノ利用に係る環境負荷の低減に対する取組み」、(2)人と自然との「共生」を図るための取組み、及び(3)あらゆる主体の「参加」と「国際的取組み」に関する施策の事例として、大都市における「省資源・廃棄物対策」、「快適な環境の形成」及び「自治体レベルでの地球規模の環境破壊防止への取組み」を中心にその現状と課題を述べることとする。

1 我が国における環境行政の現状

上述したとおり、様々な意味で広がりを持つに至った今日の環境問題に対処するため、平成5年に環境基本法が策定され、翌6年には同法に基づき環境基本計画が策定された。環境基本計画では、人の生産・消費パターンを変革することによって、「循環」を基調とする経済社会システムを作ることと、生物多様性の減少を食い止めることなどによって、人と自然の「共生」を図ることが重要であるとするとともに、これらを達成するために、あらゆる主体の「参加」と地球規模での「国際的取組」が必要であるとした。

環境基本法や環境基本計画で目指しているところは、人間の活動によってもたらされる環境への負荷をできるだけ小さくしていくことや、人と自然との適切なかかわり合いを確保することによって、人類が存続する基盤である恵み豊かな環境を保全していこうということである。しかしながら、現実には、我々の意識は、環境対策の必要性にはなんとなく共感するというレベルに留まっていることが多く、社会全体として行うべき具体的対策や、一人一人が実際に行う環境保全のための活動は、十分な厚みと広がりを持っているとは言えない。環境保全のための取組みが、成果を挙げることができるかどうかは今後にかかっているのである。以下、国レベルにおいて推進されている環境施策の骨格をなすと考えられる、(1)「循環」を基調とした「モノ利用に係る環境負荷の低減に対する取組み」、(2)人と自然との「共生」

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION