付録B(4)―統合型GISを取り巻く技術環境等
ここでは、統合型GISを取り巻く技術環境に関連して、基準点データとGPS測量、さらにセキュリティ確保について述べる。空間データの品質向上のために、適正な基準点データの設定が肝要となり、その基準点を計測する技法として、GPS測量の分野で新たな測位技術の開発が進行している。一方、統合型GISの円滑な運用のためには、全庁的な視点でセキュリティ・ポリシーを明確に定め、人的リスク等についても技術的な対応を検討していく必要がある。
(a)基準点データとGPS測量
統合型GISにおいて適正な基準点データを設定することは、空間データの品質を高める上で非常に重要なことである。しかし、基準点には、国が設定したものを始めとして多様な種類があり、相互の整合性は必ずしも図られていない。
ここでは、基準点データの内容と意義について述べた後、特にその技術動向が注目されるGPS測量について説明を行い、さらに電子基準点とそのデータの提供に関する動向について述べる。
●基準点データの内容と意義
基準とすべき、恒常的に位置が不変な点を、広大な宇宙空間で見出すことは不可能であるため、厳密な意味で、絶対座標を付与できる基準点は存在しえない。
従って、事物の位置を考える場合、何らかの基準点を設け、そこからの距離・方向で座標を確定していく必要がある。このように、あらゆる事象は、多かれ少なかれ、相対的な配置関係により座標や位置が設定されていく。この意味において、空間データの要求品質レベルを設定する際、いわゆる絶対的、あるいは相対的な位置精度のどちらを採用しても差し支えないことと考えられる。
しかし現実には、基準点にも多様な種類が存在している。現在、日本においては、国の設定した基準点、GPSデータ用の基準点、地方公共団体が独自計測した基準点等が混在している。そして、各種基準点間で必ずしも整合性がとられている状況ではなく、位置精度に関しても同様な品質が保たれているとは言い難い。
一方、基準点のデータは、他の空間データにとって、位置座標の拠り所となり、品質レベルを確定する要素となる。従って、将来的に、各種基準点間での整合性や、GISで利用する基準点の統一化が図られていくと、基準点データは、共用データのメタデータとしての重要性が高まり、共用化されることが望ましい方向に向かうものと考えられる。