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(3)中心的な課題と解決方向性

 

(a)地番・家屋データ等の庁内における多目的利用

従来,地方公共団体の固定資産税業務を中心としたGISでは地番・家屋等の空間データが広く用いられきた。これらは、地方公共団体の他の業務においても、骨格となるデータとしての活用が期待されニーズが高い。GISの有効利用の観点からも地番・家屋データの庁内における多目的利用が望まれる。

今後、地方公共団体におけるGISの利用環境に合わせ、首長による承認と流通させるデータ範囲の絞り込みを行うこと等を担保に、庁内における複数部署での利用を促進していくことが求められる。その際には、個人情報保護に十分に配慮していくことが肝要である。

 

?庁内における他目的利用の実現に向けての手順

地番・家屋データの多目的利用を実現していくには、まず、地方税法22条に規定されている守秘義務の範囲を、整理する必要がある。併せて、庁内において、地番・家屋データの多目的利用を間接的に制限している制度等についても必要に応じてその見直しを検討する。

次に、地番・家屋データのうち、庁内において流通が可能である項目を選定していく。この際、地方公共団体の実情を考慮した上で、フィーチャーレベルで流通データを選定していくことが基本となる。

さらに、庁内におけるデータの品質表示を制度化するなどして、品質を承知した上でのデータ利用を促進していくことが肝要となる。

そして、データの庁内流通に対する担保制度を構築していく。具体的には、流通に先駆け首長による承認を必要とすること、データの最低品質レベルの維持等、デ―夕作成部署における責任や権限範囲を明文化していくこと等は、制度として整備されていく方が望ましい。

以上の主な手順を踏み、実際に空間データの庁内流通が開始されていくこととなるが、流通を開始した後においても、見直し制度の整備・運用により、制度面において、新たに流通データを付加したり、逆に、データによっては流通を中止したりすること等が可能であるよう保証していく必要がある。これにより、地方公共団体は、その取り巻く環境変化に迅速に対応していくことが可能となる。

 

?データ項目の選定における留意点

ここでは、庁内において流通が可能となった場合における、流通の対象となる地番・家屋データ項目の選定に当たって、留意すべき点に関して考察する。

検討を要する項目の例としては、地番関連のデータでは、土地の形状等の図形デー夕(いわゆる地番データ)や土地所有者名・地目・地積等の文字数値データが考えられる。あるいは、家屋関連のデータでは、家屋形状等の図形データや家屋所有者名・用途・構造・階層・面積等の文字数値データが挙げられる。これらの中から、各地方公共団体が実情を十分に考慮し、流通に対する庁内ニーズが高く、流通により重大な問題が発生しない項目を選定していくことが望ましい。

一般的に流通可能と想定されるのは、登記簿に記載されているデータ項目である。登記簿記載項目は、広く住民に公開されているデータであり、庁内流通についての障害は少ないものと考えられる。

また、住民のプライバシーに関するものであったり、流通させるメリットが乏しいこと等から、主管する部署に留めておいたほうがよいと考えられるものとしては、土地・家屋に関する、登記・未登記等の属性データ等が挙げられる。なお、課税・非課税等の属性データは、地方税法22条に規定されている守秘義務との関係で、税務担当部署以外への流通は原則的に困難であると考える。

さらに、庁内で流通させるデータの選定を行う際、大きく二種類に分類できる空間データの特徴に注目していくことも有意義と思われる。空間データは、現実社会において、実際に目で見ることができる事象を示したデータと、それらの事象に関しての意味・属性等を表現するデータとに分けられる。前者の例として、道路や公共物の形状等を表わした図形データが挙げられる。また、後者の例として、筆界形状データ等が考えられる。いわゆる筆界線は、必ずしも日で見える土地の境界線と一致しているわけではなく、本来地方税法において意味をなす想定上の線データである。前者の、実際に日で見ることができる事象を示したデータは、比較的庁内流通に関して問題が少ない分野として捉えることができる。一方、後者の日で見える事象に関しての意味・属性等を表現するデータに関しては、流通が困難である項目を含んでいるケースも見受けられ、流通範囲を決定する際に、データ項目によっては各地方公共団体で十分に検討を重ねることが必要となってくる。

 

 

 

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