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第4章 統合型GISへの課題と解決方向性

 

(1)制度面での課題と解決

統合型GISを実現する上での、関係諸法令・組織体制・運用ルール等の制度面での課題は、大きくGIS展開方針・整備推進環境・管理体制という側面に分けて整理することができる。

 

(a)地方公共団体のGIS展開方針

資源の有効活用が求められる社会的な潮流の中で、統合型GISの整備を促進していくためには、まず、地方公共団体内部において、整備による地域社会への還元効果を明確に把握していくことが課題となる。

そのためには、GISの利用による直接的な地域社会への還元効果として、住民との接点となる窓口業務において、サービス提供のスピードアップや、統合的なデータ利用により住民の求めているサービスの的確な提供が図られる点があることに、注目していく必要がある。また、統合型GISは、各部署において、集約的なデータ収集を可能にするため、都市計画・防災計画等の各種計画策定や政策立案を強力に支援できることにも留意する必要がある。これにより、地域社会では間接的な還元効果を享受することとなる。

次に、民間における空間データの整備主体や利用しているデータ内容を把握することにより、地方公共団体との空間データの相互利用を実現していくことが課題となる。また、庁内での整備データとその公開範囲を地域社会に明示していくことは、空間データの整備において、地域社会で官民分担が促進される点において重要である。地域社会において、空間データへのニーズが高まっている中、官民のデータ整備のすみわけを促進することで、二重整備を回避していくことが求められている。ただし、このように地方公共団体の保有するデータを庁外に提供するに当たっては、個人情報保護に留意しなければならないことは言うまでもない。

さらに、統合型GISを整備する上で、整備主体である地方公共団体におけるインセンティブの確立が課題となる。ここで言うインセンティブとは、空間データの相互利用による便益享受や、業務効率化による職員の負担軽減効果等を指している。これらについては各部署において具体的に評価していくことが望まれる。

(b)GIS推進のための環境整備

統合型GISを実現していくためには、適切な運用ルールの策定が重要である。

運用ルールとは、情報の効率的な管理、情報の共用化、データ整備・共通利用促進等に関するルールであり、この策定に関しては、庁内における制度面での環境整備上、早期実現が望まれる。策定にあたり、先進事例を参考に、地方公共団体の特性を加味していくことが望ましい。

統合型GISを整備していく場合、特に、データの効率的な取得/更新のための情報管理の確立が、重要な課題となることから、空間データの利用を開始するに当たり、取得から保存・更新というデータライフサイクルを考慮し、ルール化を含めて制度面から各データの更新周期や品質レベルを管理していくという環境整備を進めることが望ましい。また、データ毎の品質検証方法を、利用ニーズに合わせて選択していくことも重要である。この品質検証に関しては、先進的にGISを導入し統合的な活用を検討している地方公共団体においても、確立が早急に望まれている現状にある。

 

(c)開発と運用における管理体制

統合型GISを構築するためには、総合的な視点に立った推進計画の策定と、それに基づいた開発・運用面での組織体制の確立が課題となる。GISの開発と運用における管理体制の組織化を行うことで、庁内横断的な連携のもと、一元的な開発と運用をスムーズに推進することが可能となる。

また、庁内において、統合型GISの普及啓蒙及び運用を促進していくために、全庁的な企画・調整機能をもつクリアリングハウスという仕組みの整備や、システム利用者に対する情報処理面におけるリテラシーの確保が肝要となる。

なお、システム運用面における組織体制や、教育研修制度に関しては、民間のノウハウを活用することも検討すべきである。

 

 

 

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