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(c)セキュリティの確保

統合型GISの大きな特徴の一つは、必要な空間データの共用を庁内で実現することにあるが、運用上、セキュリティの観点から、潜在的なリスクを検討しておく必要がある。例えば、ある共用ファイルがコンピューターウィルスに感染した場合、そのファイルが各部署で使用されることにより、コンピューターウィルスは庁内全体に広まってしまう。あるいは、主管部署以外で、正当な手続きを踏まず共用ファイルにデータ修正を加え、そのデータが庁内で流通してしまう可能性もある。さらに、共用ファイルに、誤って機密性の高い個人情報を含めてしまい、プライバシー保護上、問題が生じてしまうことも考えられる。

このような、潜在的なリスクを未然に回避するために、セキュリティ・ポリシーを明確にし、特に庁内での人的リスクを削減していくことが必要となる。(付録B(4)参照)

 

(d)実現可能な範囲と留意点

?情報流通に関して

(?)現行諸法制度と情報流通

現行諸法制度上の制約に留意して、特に「個人情報保護と情報公開」や「著作権」等の観点から、庁内外でのデータ利用や二次活用に関して、個別に検討する必要がある。検討領域として、測量法、都市計画法、国土調査法さらには、また、PL法、地方税法、住民基本台帳法、著作権法等も含まれてくる。例えば、庁内では、住民基本台帳に記録されている個人データに関して、個人情報保護の観点から限定されたもの(住所・氏名・性別等)を、利用承認手続き・利用の際の安全保護措置など必要な情報管理措置を規則・要綱等により定めた上で、必要な部署においての利用が可能である。したがって、庁内での統合型GISとのデータ間のリンクは、技術的な側面を除けば実現可能な範囲と考えられる。なお、住民基本台帳上の個人データを、GISを通じて庁外へ提供することは、現行法制度上は不可能である。

 

(?)インターネットを利用した情報流通

地方公共団体が、ホームページを通じて空間データを提供している例も多くなっている。最近では、単に空間データをインターネット経由で提供するだけではなく、インターネットの双方向性を活用した例も見られる。例えば、ホームページ上に、都市計画案の空間データを掲示し、インターネット経由で住民からの意見を公募し、実際の都市計画策定に反映させている地方公共団体もある。今後、このような、インターネットを利用した空間データの流通形態に、留意していく必要があろう。

?制度/運用ルールの規定と調整に関して

情報の共用化やデータ流通をスムーズにし、効率的な情報化を推進するための手法等を提示するガイドラインの策定は既に実例がある。また、情報の一括管理と共用化を実現するための、総合調整を行う専門組織の設置も、既に複数の地方公共団体で実現化されている。

 

?セキュリティの確保について

統合型GIS環境下でも、特に一部の個人情報保護の強化を図るために、ネットワーク接続の利便性を部分的に排除することが必要となるケースもあろう。この場合、例えば、オンラインで庁内流通させるデータは、空間データ本体ではなく、メタデータだけにしていくという対応方法が考えられる。そして、ユーザーはオンラインでメタデータを閲覧し、必要な空間データの所在を確認した後、データ主管部署を訪ね、オフラインでデータを入手するという一連の仕組みが考えられる。

また、オンラインで庁内流通を行いながら、おおもととなる空間データの安全性を確保し、正当な手続きを踏んだデータ更新を徹底するためには、対象となる空間データの主管部署において、データベースからコピーした二次データ群を共用ファイルとして整理し、このファイルを庁内流通させていく方法も考えられる。

 

 

 

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