荒巻
私は、地方分権時代になれば自治体の仕事が増えるから、市町村の執行能力が上がらないといけないという主張は理解できますが、市町村合併を優先すべきだという主張をされる方は、基礎的自治体を作るという点と、行政執行能力がある団体を作るという点を混同されているのではないかと思います。基礎的自治体であれば、住民が自分達の団体に直接参加でき、あるいは自治体を動かす人が直接住民と顔を合わせられるということが必要ですから、おのずからその規模が定まってくるものと思います。ですから、人口100万とか200万という規模の市は、果たして基礎的自治体といえるのかという疑問を感じます。まず市町村合併ありきというのではなく、こうした点をよく考えるべきだと思うのです。
成熟社会においては、個性、特性、自主性というものを認めることが豊かさを実現することにつながります。ですから人口は何万人規模にしなきゃいけないとか、日本中をいくつにくくらなきゃいけないという議論が先に出てくるのはおかしいと思うわけです。
また、地方分権が規制緩和と同じ流れの中から出てきているという理屈からしても、画一的な地方団体をつくれというのは、規制緩和に逆行するという感じがします。特に受け皿論についてあまりにもそういうことを強調し、それが実現できなければ分権は実行できないというようなことを言われる方は、理解が足りないか、あるいは分権を阻止する意図でそういう理屈を作っておられるのかのどちらかではないかとさえ思います。(拍手)
川島
拍手がおきましたが、共感する方が多いのではないかと思います。時間がかなり押してまいりましたので、最後にパネリストの皆さんから一言ずつ言い残したことを伺いたいと思います。
諸井委員長から、勧告は出発点であり、今後は、府県、市町村、さらには住民の方々に、どういう取り組みをやっていただくかということが重要だというお話がございましたので、住民の皆さんに対する注文や期待を中心にお話を伺えればと思います。
森田
私の場合随分いろいろとお話をさせていただきましたので、簡潔にさせていただきます。やはり最終的には住民自治が原点になると思います。現在は地方議会の問題もそうですが、住民の方の関心というのは、必ずしも地方自治に集まっていません。それは地方議会の選挙の投票率の低下に現れていると思います。しかし他面におきましては、最近、原子力発電所の建設とか、廃棄物の処分場の立地問題などにおいては、住民のエネルギーがすごく出てまいりました。これが住民投票制度の請求という形で現れてきております。