機関委任事務制度を無くした後、この点をどうすべきかを検討する際に、都道府県に市町村に対する何らかの優越的な地位を認める必要があるのかどうかが問題となりました。全国3千いくつも市町村がございますと、その中にはいろんな所があるから、中には県がかなり強い権限で指導する必要がある場合もあるのではないかとか、単に助言と勧告だけではなかなかうまくいかないのではないかといった議論がでてまいりまして、そのあたりをどうすべきかなどといったことがかなり議論になったわけです。しかし、それをどうすべきかという明確な答えはまだ出ておりません。
もう一点は地方自治の考え方を徹底するには、住民に近い身近な自治体に権限を移すことが原則だとすると、市町村になるべく権限を委譲したほうがいいということになるわけですが、問題は市町村の側に事務を引き受けるだけの能力や事務処理体制があるのかという問題があります。また、事務を移すことが適切であるかどうかということも随分議論になりました。それでもなるべく都道府県から市町村への事務委譲を進めようということで、法律上それが可能なものについては、第4次勧告で例示をしたわけです。この点について各省庁と議論になったポイントは市町村の側の執行体制というのができていないのではないかということでありました。政令指定都市レベルならいいですが、それ以下になりますとなかなかむずかしいというわけです。
個別法で市に権限を委譲しているものを調べてみますと、個別に委譲対象とする市を指定しているというケースがかなりありまして、各省庁が申請なり何なり必要に応じて個別にチェックをしているわけです。しかしこの仕組みを残しますと、どうしても国の側が優位になってしまいます。従って何らかの一律の基準で権限を下ろすということができるはずであるし、そうすべきであるという考え方を採ったわけです。
現実には今申し上げましたように、個別法によって、保健所や福祉事務所が置ける市だとか、建築主事を置ける市などがバラバラに決められており、実際には同じ市といいましても、細かく区分けされているわけです。そこで荒巻知事がおっしゃいますように、市の中にいろんな類型が出てきて、かえって混乱を招くのではないかという御意見があったわけですが、個別法でばらばらに置くよりは、きちんとある程度の類型を揃えた方がいいのではないかという観点から、人口20万以上とか中核市という基準でもってこれだけの権限は任せるという考え方を採ったわけです。これはある意味でいいますと、受け皿の標準的な能力水準を示すことにもなると思いますので、都道府県から市町村に権限委譲する場合にも、一つの目安になるのではないかと思います‐。
とにかく全部の市町村に委譲するということになりますと、例外的にとはいえ、難しい所があるとしますと、なかなか国の側もイエスとはいわないわけですし、かといって個別に対応するということにしますと、今言いましたような事情があるものですから、あのような形になったということを御理解いただきたいと思います。