そこで、分権をする前に地方自治体の守備範囲なり、考え方を整理しておかないと混乱するということをこれまでから申し上げております。特に政令指定都市と府県との関係は住民の方々にわかりにくい制度となっており、地方自治体に対する不信感を招くことにもなっております。例えば、府の事務所に府道を直してくれといったら、いや、京都市内の道路は京都市の仕事だからそちらに話をしてくれということになるわけですが、住民からみると、責任逃れをしてたらい回しをしているように誤解される恐れがあります。こうした住民にわかりにくい制度をまず整理し、それから分権をすべきだということを言っているのですが、残念ながら分権委員会の勧告の中にも、人口20万以上のところにはこれこれの権限を委譲するというように、同じ市の中でもいくつもに分割するということで、一層混乱を招くおそれなしとしません。
すべての市町村を基礎的自治体ということで一つにくくって、その中で人口規模によりこれだけの権限を委譲するというように区分するのならいいのですが、市町村という区分を残したまま、さらにその市をいくつにもわけていくというのでは混乱を招くと思うのです。こうした点について問題意識を持っておりまして、自分自身としても、住民の信頼が失われないような市町村と府県の関係づくりに努力したいと思っております。
川島
今のお話は荒巻知事の持論の話でございますが、確かに一つの問題点だろうと思います。今度の勧告では市町村への権限委譲をできるだけ進めようということから、人口規模に応じた権限委譲を示したわけでございますが、今おっしゃられた問題をはじめ、いろんな問題点があろうかと思います。この点については、森田先生いかがですか。
森田
都道府県と市町村の関係ですが、私の最初の発言の時に申し上げましたように、今回はとにかく国から権限を持ってくるというのが主眼でありまして、当然その場合の受け手というのは都道府県が想定されました。都道府県と市町村をどうするのかということはなかなかむずかしい問題でして、第2次勧告で少し触れておりますけれども、先ほど小幡さんがおっしゃいましたように、必ずしも明確な形では書かれておりません。といいますのは、その制度について検討いたしました行政関係検討グループにおいてもメンバーごとに意見が違いまして、合意に至らなかったからでございます。
これまで、機関委任事務制度の下では、とにかく国が一番偉くて、国の意を受けて都道府県が市町村を指導監督するという仕組みがたくさんございます。そういう意味で、上下関係が非常に明確になっていたわけです。制度上は都道府県と市町村は対等なのですが、機関委任事務制度の下では上下関係を強いられていたわけです。