第3番目はそれぞれの地方自治体、特に市町村の中におきまして、いかにして住民自治を実現していくかということではないかと思います。この3つがセットで改革が行われて、はじめて地方制度が全面的に変わってくるということになろうかと思います。
今回の分権委員会のやり方といたしましては、まず戦略的に、焦点を国から地方への権限委譲に置き、国の持っている権限を減らして、地方の自己決定権の範囲を広げるということに集中したということです。従いまして、その受け皿の問題であるとか、あるいは住民自治の制度の問題であるとか、そういうものはあとに残されているということです。そういう意味で、これまでは国の持っているものを取ってくることに専念してきたわけですが、それをどう配分し、どう活かしていくかということについては、地方の側にボールが投げられているというように理解すべきであると思っております。
分権委員会では国と地方の関係を上下・主従の関係から対等・協力の関係に改めることを基本的な考え方といたしました。したがって、勧告では、国のやっている仕事や国の権限、組織をまるごと地方に移してしまうというような形での権限委譲というものはあまり考えておりません。ではいったい分権委員会は何をやったかといいますと、国の関与をできるだけ縮減するということを主たるねらいにしたわけです。先ほどから話が出ておりますように、機関委任事務制度は、地方を国の監督下、統制下において、国の仕事を地方にやらせるという仕組みです。地方は地方で自前の組織を持っていながら、自分の仕事のためにそれを使うのではなくて、国のために使っているわけでして、この仕組みを改めようと考えたわけです。
日本の場合には他の国と比べまして、都道府県や市町村がかなり多くの仕事をしております。これは機関委任事務という形で本来国の仕事を地方自治体が処理しているためです。しかし、言い換えれば地方自治体には事務処理のノウハウが蓄積されていますので、地方が国の指揮監督下に置かれ、直接の権限を持っていないという状態を無くすことで、充分に地方自治体の自己決定権が拡大することになるわけです。そういった意味で我々はこれを現住所主義と呼んでおります。現実に事務をやっているところにその権限を移すという改革をやろうというわけです。
それから、上下・主従の関係をやめて対等協力の関係にするといいますけれども、この対等・協力というのは、実力において対等・協力というわけではなくて、あくまでも法的主体として対等・協力な関係ということです。これまでの国と地方の関係は、国のほうが当然優位にあるから、国に包括的な指揮監督権があるということになっております。上位にある国のほうが偉いのだから、国は地方に対して自由にコントロールできると解釈されてきたわけです。分権委員会ではその点を改めて、あくまでも国と地方の関係もきちんとルールに則った関係にしようとしたのです。