特に第3次勧告の沖縄問題もそうですし、あるいは機関委任事務問題につきましても、批判があります。その中でよく出ましたのが、分権委員会は官僚の抵抗に屈したというものです。確かに交渉ですから、向こう側に押されてしまって、説得できなかった場合には、官僚の抵抗に屈したということになるのかもしれませんけれども、実際は、ただただこちらがお願いして認められなかったとか、各省庁がノーだといって駄目になってしまったとか、そういう形での話し合いでは決してなかったわけです。
その点についてもう少し申し上げておきますと、各省庁との膝詰め交渉では、最初はやはりお互いに相手がどう出てくるかわかりませんから、かなりきびしい対立もございました。その対立の中で合意を求めていったわけでして、第1次勧告ではなかなか合意を得られる中身が増えてこなかったというところがあったと思います。しかし、人間は学習するものですので、次第に交渉を続けている内に、相手の考え方はどういうものなのかということがわかってきます。分権委員会を相手に、各省庁の側も完全にノーと全部いい切ることもできないということから、お互いにどういう解決方法があるのかということの模索を始めました。今年に入ってからは、合意を得られる確率が高くなってきたと思っております。そういう意味で、各省庁の側も改革の実現に努力して下さるものと信じているわけです。
先ほど諸井委員長のお話の中で、分権はこれで完全ではなくて、まだ始まった段階であるというようにおっしゃいました。そのことについて申し上げておきますと、今回の勧告ではかなりのエネルギーを機関委任事務制度の廃止と、その後の事務区分に投入したわけですけれども、主として取り上げていますのは国と地方の関係です。
地方分権の改革を完結させるまでには、3つの段階があると思います。一番目の段階はまず国が持っている権限の委譲や、国の関与を廃止して、地方の自己決定権を拡大するということです。二番目の段階としましては、受け皿論になるかもしれませんけれども、都道府県と市町村の関係、あるいはそれぞれの相互間の関係、そういうものをどういう制度の下に置くのがいいのかという点です。