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それまでの時点では中央省庁で機関委任事務制度の撤廃について賛成をしたところは一つもありませんでした。しかし、機関委任事務制度を止めるとなるとその後の事務の処理をどうするのだということが問題になってきます。そこで、自治事務と法定受託事務という2つの事務に大きく区分することを提案したわけです。法定受託事務とは、例えば国政選挙だとか、国勢調査、旅券の交付、外国人登録など本来国がやらなくてはならない仕事なのですが、住民の利便性とか、効率性のために地方自治体にお願いをする仕事であり、これは法律でもって定め、地方自治体に委託し、地方自治体が受託するというジャンルの仕事です。それから、自治事務とは根本の法律は国が作るとしても、その法律の範囲内で地方が自由に考えて実施してよい事務であります。さらに、部会のほうの仕事として、権限委譲のことも個別に具体的に記しました。

4月から参与の先生方を新たにお願いして、二つの部会に加えて行政関係検討グループ、補助金税財源検討グループという二つのグループを作り、本委員会と二つの部会、二つのグループという体制で、仕事を進めていったわけです。

各省庁のヒヤリングを始めてみましたら、機関委任事務制度の撤廃は反対だといっていた声はまったく出なくなりまして、法定受託事務と自治事務のいずれに分類するかという議論になりました。つまり私の所でやっている仕事は全部法定受託事務にして下さいという議論になっていったわけです。何度議論してもなかなか自治事務にしようということにはならず、これではどうもラチがあかないなということで、結局、学者の先生方に各省の局長とか、審議官というような人達と膝詰め談判をしてもらいました。これはおそらく今までの審議会でこんなことをやったところはないのではないかと思います。学者の方は学問的な理論を主張され、一方、行政の方は実務上のいろんな問題点を出して、やりあって、「じゃあ、ここのところは判りました、自治事務にいたしましょう、これは是非とも法定受託事務にして下さい。」というような形で、事務の整理を進めていったわけでございます。

その成果が昨年の12月に出しました第1次勧告でございます。ここでは明確に機関委任事務制度は撤廃するというようにしております。

 

 

 

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