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基調講演

地方分権勧告のねらいと今後の課題

 

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講師 諸井虔 (地方分権推進委員会委員長)

PROFILE

1928年生まれ。'53年東京大学経済学部卒業。同年、(株)日本興業銀行入行、'65年同行審査部調査役。'67年秩父セメント(株)入社、'69年同社取締役を経て'76年同社代表取締役社長、'94年秩父小野田(株)代表取締役会長、'96年同社取締役相談役に就任、現在に至る。

地方分権推進委員会委員長、(社)経済同友会幹事、産業構造審議会委員、経済審議会委員、税制調査会委員、行政改革会議委員などを務める。

 

地方分権推進委員会委員長の諸井でございます。今日は地方分権推進フォーラムにお招きをいただきまして、誠にありがとうございます。地方分権推進委員長の立場といたしまして、このように盛大にフォーラムが催され、多くの方に地方分権について関心を持っていただくということは、大変ありがたいことで、また、心強いことと、心からうれしく思っている次第でございます。

この地方分権というのは、最近は言葉としても、人口に膾炙してまいったわけでございますが、地方分権とはいったい何をすることであり、何のためにやるのかということについて、どうもはっきりと認識されていないというような感じがするのでございます。

日本の国は明治以来、中央集権でやってまいりました。それも決してうまくいかなかったというわけではありません。過去の歴史を振り返りますと中央集権というものが非常に効果を発揮して、日本が高度成長をとげた一方、非常に平等な社会を作り上げてきました。ただ最近10年ぐらい前からでしょうか、どうも中央集権体制というものがあらゆる面で行き詰まりをきたしており、これを変えなければならないというのが、現在の改革の大きな流れとなっております。地方の行政に関しても全べて統一的、画一的に、そして広域的に見てやっていこうという考え方で進められてまいりましたが、これは今申し上げたように、ナショナルミニマムを構築していく段階では、非常に効果を発揮しましたし、また、公平性が実現できました。

世界でも日本ほど平等公平な社会はないと思います。経済成長とともに、そういう平等社会というものを作りあげてきたという面においては、確かに大きな成功を収めたと思います。これまではナショナルミニマムを達成し、先進国に追いつき、追い越せというのが国民的な目標であったわけですが、それを達成した後、おかしくなってきたということではないかと思います。

例えば道路にしても、橋にしても、鉄道にしても、空港にしても、全国津々浦々だいたい整ってきました。あるいは教育も全国的にまあまあ同じような教育が行われています。あるいは郵便局も全国に展開し、また、電話も郵便も全国に行き渡っています。テレビも全国で見られるようになっています。

 

 

 

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