今回の改革の大きな部分は、繰り返し申しますが機関委任事務の本籍を現住所に移すということです。そこで、現住所で今までちゃんとやれているではないか、国は関与が必要だと言って手綱を握りたがっているけれども、それは今までも制度上そうなっているだけで実際にはほとんどたいした関与もせずに多くの機関委任事務は現住所でうまく処理されてきていたではないかということを、各省庁との間でやりあってきたわけです。そういう立場からしますと、受け皿論というのは、従来とかく分権をさまたげるための、必ずしも実態を伴わない口実として使われてきた面があるので、それは議論の出発点にはしないことにしようということで、今回の分権の話は進んでいるわけですね。それが、分権委員会の基本的なスタンスであろうと思います。ただ、差はありながら、各省庁の側の相当の抵抗を排しながらということは、各省庁だけではないいろいろな利害がからまっているわけでありまして、そういう諸方面からの批判に対して、やはり分権が必要であり、望ましいことだと言うためには、この問題を、中央と地方を通じた行政改革の観点から位置づけることもやはり必要ではある、というのも否定できないところです。事務を自主的に処理していくための体制の整備ということは自治体としては当然やっていただけるはずのことでしょう。私としては、勧告では念のため地方行政体制の整備についていろんなことを申し上げているのですが、勧告に書かなくても、特に住民参加とか、そういった問題についてはやっていただけると期待しているわけです。
篠崎
はい。あの堀越さんね、先ほども住民参加とか市民団体の動きとか、あるいは最近NPOの自治体参加というようなことが盛んに進んでいますよね。この後の分権社会の中では、そうしたいわゆる住民、市民の活動というのと、自治体の活動というものが、どう有機的に結び付くのかという点が一つ課題になると思うんですけど、その点はいかがなんでしょう。
堀越
小早川先生から、勧告の中に書かなくても自治体は市民参加をやるだろうというお話がありましたが、私は書いてもらって良かったなと思っているんです。