また、保育所の条例はつくりなさいということでしたが、厚生省がモデル条例案を示しました。その後福祉については権限が下りてきているといわれていますが、細かい話で言えば、特別養護老人ホームをつくるのに1千万円くらいかかる機械入浴の機械を入れなければいけないことになっていると、特別養護老人ホームの施設長が嘆いていました。自分たちはいらないと思っている施設もあるわけです。でも、それがなければ建設が認められないということですから、機関委任事務の廃止という中身をどこまで考えるかという議論をしてほしいなと思っています。
そういうふうにしないと、自治事務になったとしても、実際に実行するにあたって、建物の基準とか、人の配置とか、誰がサービスを受けられるかとか、誰がサービスを担えるかとか、そういう基準が国で決まるのでは表に出ていた支配統制が陰に回ってしまっただけということになりかねません。それではせっかくの自治体の、意気込みが肩すかしをくらうことになってしまいます。自治体が選択をして、判断をして、ポリシーを持ってやったことについて評価をし合って次を考えることによって、自治体の政策形成能力も高まると思うんです。そういうことが含まれた機関委任事務の廃止、自治事務の設立ということなのか、その辺の詳しいことがよく分かりません。せっかく自治事務になったのに、また国の関与が大きくて、結局誰が決めているのかよく分からないということになってしまうと困ります。
たぶん、補助金とか財源の問題が関わると思いますが、機関委任事務の廃止が、ただ国の事務が自治体に移るということだけではなくて、増田さんがおっしゃったように、一人ひとりの決定が問われて、いろいろなことを考えて決められる人々という地域の財産づくりにつながることが必要だと思います。もう少し丁寧に議論し、考えないとなかなかそこにいかないような仕組みができるかもしれません。一つ危惧しているのは、結局、公的介護保険でも政省令がものすごく多いことです。保険者は市町村なのに、内容についての基準は厚生省が政令や省令で決めるとなっています。そういうものを一つひとつ解いていくという作業と一緒に、この機関委任事務の廃止と自治事務化ということを丁寧に考えていくのが次の段階かなと思っています。
篠崎
はい、分かりました。で、中原さんね、先ほど知事あるいは小笠原さんのほうからもありましたけど、住民がこの機関委任事務の廃止というものが自分たちの生活にどう影響するのかということが本当に分かっているんだろうか、という問題が一方にあると思うんですけど、この点についてはいかがですか。
中原
十分に分かっていない部分が多いと思います。機関委任事務廃止だけ取り上げたのでは分権の意味がない。つまり財源問題が絡むわけであります。