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今回はそうではなくて、各省庁から合意を全部一つひとつ得たうえでそれを勧告の中身にしようということで、今のようなやり方を取ったわけです。実行される勧告をつくろうということです。新聞では、総理大臣が実行可能な勧告にしてくれとおっしゃったので、それで各省庁が、なるほど自分たちが合意しなければ勧告にはならないのだなと考えて、そこで抵抗がグンと強まったというようなことが報道されております。ただ、いずれにせよ実行可能なということは委員会としても考えていたので、そこをどれだけ強調するかという話なのですが。

というわけで、それぞれの事務につきまして根拠法令から事務の実施の実態などのデータまでも集めて、特別に法定受託事務とすべき理由があるのかということをギリギリと議論しました。できるだけは原則に従って自治事務にしよう、しかし、委員会としても納得せざるを得ないものについては法定受託事務とすることを認める。大まかに申し上げて、そういうことで処理をしたわけであります。数の話は、先ほど申しましたように、あまりこれに重きを置かれては困るのですが、必ず聞かれますので簡単に触れます。資料にも書かれておりますが、先ほどの561をベースにしますと、法定受託事務が260項目になった。例外のはずなのにこんなにあるのは多すぎるというふうに言われるんですが、カッコ書きで、うち書類経由等111項目とありまして、ここはいわゆる進達事務とか経由事務といったようなものが、それぞれ1項目に数えられています。こういったものは政策面から見てそれほど重要な意味を持っているわけではないということで別にしますと、重要な事務の振り分けについては法定受託事務はそれほど多くはありませんということを、委員会としてはしきりに強調しているのですが、そこは取り方の問題であります。

そのようなことで、この、機関委任事務の廃止に伴う事務の整理という作業を延々とやりました。これは先ほど申し上げましたように国の関与を減らすという意味を含んでいますが、機関委任事務以外にも従来の自治体の事務についての国の関与にはいろいろ問題がありました。そこで、それもひっくるめて関与の一般ルールをはっきりさせようというのが、もう1つの項目でした。それから、国の関与と逆に地方自治体からの国の政策に対する意見の申し出ということも、今以上にはっきりした制度にすべきではないかというのがもう1つの項目です。最後に、いわゆる紛争処理ないし係争処理の仕組みの問題があります。これは、国と地方の関係をできるだけ独立対等の関係にする、そして公正透明なものにするという主旨からしますと、両者に法令の解釈なり何なりについて意見の対立があった場合に、それ自体公正透明なプロセスでもって処理する仕組みが必要なはずです。もしそれがないと、どちらかが一方的に意見を押しつける-多くの場合は国の側がということになると思いますが-そういう実態がそのまま残ってしまうことになりかねないわけです。分権委員会といたしましては、この係争処理の仕組みというものを、ぜひこの際制度化したい、それがなくては、機関委任事務の廃止による国、地方関係の新しい整備は完結しないということで、いろいろ努力している段階です。

 

 

 

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