それを機関委任事務とは言わずに、法律に基づいて自治体が受託して行う事務、法定受託事務というふうにネーミングを考えたわけです。そのほか、さらに例外的には、今まで機関委任事務だったけれども、この際、国のほうに引き取って直接執行しますという扱いにするものも、ごく例外的にありうる。
さて、機関委任事務の自治事務化ということは、要するに国の関与を今までよりずっと減らす、そこに実際的な意味があるわけですね。各省庁からの。通達その他による関与を減らすということももちろんです。それから、法律でもって事務の執行についていろいろ縛るということもできるだけ減らそう。法律による規制が減れば、その分だけ自治体による立法、つまり条例制定によるルールの設定の余地が広がるわけです。そういう方向で考えているのでして、そうすることによって従来と違う国と地方との間の独立対等な、そして公正透明な関係がつくりだされるのではないかということです。今回の改革が機関委任事務の廃止ということに重点を置いた現住所は変わらないわけですね。ですから、目に見えてどこがどう変わるということでない、実際に何が変わるのか、今一つはっきりしないというようなご感想をあちこちから聞くことがあります。それは、事務や権限を国から地方に移すことによって目に見える形で自治の量的な拡大を実現するということよりは、今の国の関与を減らすことで自治の質的な拡充強化を図るということ、今回の改革はどちらかというとそちらの方をねらったと言っていいかと思います。
以上が、今回の機関委任事務廃止についての基本的な考え方ですが、そこで、委員会としてこの作業を実際にやったわけです。これはなかなか作業量が大変でして、資料の記述の中にもありますが、形式的に数えて地方自治法別表で561項目の機関委任事務が挙がっています。この数字もちょっと信用できないところがありまして、いろんな数え方があるのですが。ともかく相当数の事務について、一つひとつ関係省庁との間で、自治事務にすることで異論がないかということを問い合わせまして、異論があると言ってきたものについては、事務局レベルで折衝し、さらには、グループヒアリングと称していたんですが、委員会の中の行政関係検討グループというのがありまして-私もそれに加わっておりましたが-その何人かのメンバーと、それから各省庁の局長なり審議官なり、あるいは課長なり、そういう人たちと、3対3、4対4とか、そのくらいの規模で話し合いをするいうことをやりました。今回の第2次勧告の時には、3月から6月の間に108回やったということになっています。その前の第1次勧告の時にも相当やっています。1回2時間ぐらいでそのくらいの回数、それぞれの事務について各省庁と議論をしたということになります。
そういうことをやりましたのは、従来から機関委任事務の改善というようなことはいろいろ言われていたわけで、例えば地方制度調査会なんかでも何回も勧告をしているのですが、これまではともすると改革を求める側が一方的な主張を提示し、後は政府に任せるというやり方が多くて、その結果、必ずしもそれが内容通りに実現しなかったというところがあった。