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それがやっと、ここ数年になりまして、おそらく従来の議論の状況とは一つレベルの違った根本的な制度改革の可能性を掲げて、それを実現しようという動きになってきた。それが現下の地方分権改革の状況であろうと思います。なぜ今まで50年間みんなが言ってきて、しかし実現しなかったことが、どうして今こうやって実現可能になってきたのか。その辺は、後の時代に歴史学の問題として扱われることになるのかもしれません。国の内外の政治情勢の変化や中央の政権構造の変化ですね。そんなようなことがきっかけになっているのでしょう。ただいずれにしましても、地方分権にとっては幸いな条件がいくつか重なって、こういう動きになったんだと思いますけれども、それだけにそういう条件のもとで何をどういうふうな手順で進めていったら本当にいい地方分権ができるのか、これは一つ慎重に考えないといけないわけですね。1度に全部のことができるわけではないだろうと思います。従いまして今回の地方分権につきましても、さしあたり何から手をつけるべきか。おそらくそれはこれからお話のテーマになると思いますが、機関委任事務制度の廃止ということから手をつけたわけですが、しかしそれはまず第一弾でして、その後に今度は何をなすべきか、その後にどうすべきか、これは今後さらに皆さんと考えていかねばならない問題であると思っております。

 

篠崎

はい、ありがとうございました。それから中原さんには住民の代表といいますか、県民の代表という立場からもお話をいただきます。では、中原さんよろしくお願いします。

 

中原

突然に県民の代表ということにさせられまして、いささか驚いておりますが、仕事を通じていろいろ耳にし、いろいろな方々の話を聞く機会が多いということでありましょう。岩手県民、盛岡市民の1人としてもこの問題を真剣に考えていかなければならないと思っております。それで今回のフォーラムにあたりまして改めて今までの一次勧告、二次勧告をざっと斜め読みしました。地方の時代とか東京一極集中の是正が、かねがね言われてきました。その視点から勧告を見ますと至極当然という内容であります。こうしたことが何で今までできなかったのか、というのが率直な印象というところです。しかしながら、国と地方を対等な関係に改めようというのですから、時はちょっと遅いという思いはしておりますが、十分に評価できるという思いでおります。当然のことではありますが、生活環境を見直すということに直結するだろうし、大いに期待したいと思っています。ただ、この分権推進の中で、中央省庁というんでしょうか、官僚というんでしょうか、全国的な統一性とか、あるいは公正というんでしょうか、そういう部分を確保するには、まだまだすべてを地方に云々というのは問題があるという話も聞いております。それを思いますと、やはり中央の考え方と地方の在り方、の関係というのは、まだまだ隔たりが大きいのではないかという印象を強く持っております。

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